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あなたのとりこ 261 [あなたのとりこ 9 創作]

「皆で飲む時って、片久那さんと均目君が二人で何やら話し込んでいるところなんか、あたしは見た事が無いように思うけどね」
 那間裕子女史は均目さんの言に疑わし気な気配を見せるのでありました。那間裕子女史も均目さんのたじろぐ眼容を見逃さなかったようでありました。
「後は会社で、山尾主任も那間さんも偶々外に出ている時に、とかさ」
「片久那さんは、自分からそんな事を均目君に話し掛けるような人ではないでしょう。会社では仕事と無関係の事は、なるべく喋らないでいるタイプの人よ」
「片久那制作部長も大概は無愛想にしているけど、あれでなかなか冗談を云ったりお喋りになる時があるんだよ。どういう気紛れからかは判らないけど」
「あたしや山尾さんにはそう云うところは見せた事が無いわね。均目君だけにそんなところを見せると云うのは、均目君が気に入っているからかしらね」
「那間さんや山尾主任は、政治性のある話は全く無関心だと思っているんだろう。俺は多少はその辺の興味もあると思われているんだろう」
「ふうん、そうかしらね」
 那間裕子女史は何となくの疑問をその今の均目さんの説明からは未だすっかりは拭えない、と云ったような色を濃厚に眉宇に残留させた儘、一応頷いて見せるのでありました。これはこれ以上片久那制作部長と均目さんの関係に興味が無いためでありましょうか。
「ところで山尾主任が抜けた後、特注営業はどうなるのかねえ」
 この均目さんの話題転換は、片久那制作部長と自分との関係に付いてこれ以上の追及を免れようとの魂胆からだと、取ろうと思えば取れなくもないのでありました。
「また前みたいに、土師尾さんと日比さんで受け持つんでしょう」
「そうすると出雲君と日比課長の新しい仕事の、地方特注営業はどうするんだろう」
 均目さんが渋面を作って見せるのでありました。
「都内営業と掛け持ちで、日比さんが面倒を見るんじゃないの。要するにその分、土師尾さんが前より少し多めに働けば良いのよ」
「あの人は余計な口出しはするけど、結局自分が楽をする事ばかり考えているんだから、少し多めに働くなんて、それは望むべくも無い要望と云うものだな」
 均目さんが失笑するのでありました。
「じゃあ、日比課長は益々大変だ」
 頑治さんが話しに加わるのでありました。
「そうだね。出雲君は特注営業はやったことが無いから、そっちの方面に関しては全くの素人だし、出雲君一人であれこれ考えてやるには荷が重過ぎるかな」
「今迄の出張営業にしても、そんなに意欲的に取り組んでいた風でも無いし」
 那間裕子女史が溜息を吐いてその後ほんの少しの間を置いてから、声を落として語調を変えて続けるのでありました。「でも、それより何より、あたしはここ最近、今度の人事異動にはもっと別の意図があるんじゃないかって考えているのよ」
 この女史の言に頑治さんは頷くところ大なのでありました。
(続)
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