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あなたのとりこ 232 [あなたのとりこ 8 創作]

「袁満さんの出張日数を減らすのも経費削減策ではあるけど、出雲君のこれまでの出張との兼ね合いでひょっとしたら、返って袁満さんは日数が増える可能性もあるんじゃないのかな。二人の日数の合計が少しでも減れば、それは経費削減策としては成立するし」
 均目さんも袁満さんの見解に懐疑的な事をものすのでありました。
「出雲さんの方はどう思っているのかな?」
 来見尾氏が出雲さんの方に目を向けるのでありました。
「俺っスか? 俺はその、未だ良く判らないっスねえ」
 出雲さんは少したじろいだように来見尾氏と目を合わせないで俯くのでありました。
「俺は今迄の仕事とすっかり変わる訳じゃなくて、仕事の要領みたいなものは何となく判るけど、出雲君の場合はこれまでの仕事と全く違う仕事になるしなあ」
 袁満さんが出雲さんの、未だ良く判らない、と云う感想を擁護するような、或いは補うような発言をするのでありました。
「出雲さんの仕事と云うのは、今迄に無い新しい分野の仕事なのかな?」
 これは横瀬氏の言であります。
「まああっさり云うと、土師尾営業部長とか日比さんがこれ迄やっていた都内営業の地方版、と云った感じになるのかなあ」
 袁満さんが出雲さんの代わりに応えるのでありました。
「さっきの話しに依ると、日比課長と云う人もそっちに移るみたいだよね?」
 横瀬氏が重ねて問うのでありました。
「そんなような気配かなあ」
 袁満さんが曖昧な頷きを返すのでありました。袁満さんも出雲さんの新しい仕事に関しては未だ今のところ茫洋とした景色しか見えないようであります。
「で、その日比さんと云う人が今迄やっていた営業を山尾さんが引き継ぐ訳だ」
「まあ、そんなような土師尾営業部長の腹みたいですかね」
「山尾さんは自身で納得して、意欲的な気持ちで営業に移るの?」
 それ迄黙って話しを聞いていた派江貫氏がここで口を挟むのでありました。
「それは山尾主任に直接聞いて貰わないとここで断言出来ませんけど、まあ、片久那制作部長に諄々と説得されたのもあるし、丁度タイミングとして自分が結婚すると云う事もあって、心根の内では納得はしていないところもあるけど、だかと云って思い切って会社辞める訳にもいかないし、そうなると結局、会社の示した方針を受け入れるしかないと云う気持ちになっているんじゃないですかね。何となくそんな事を仕事の引き継ぎの話しの折に本人からちょろっと聞きましたね。内心、忸怩たるものはありそうではあったけど」
 均目さんがそんなエピソードを紹介するのでありました。「それに、最近自分は制作部の仕事に向いていないと感じるところがある、なんて了見も漏らしていましたね」
「だから丁度、好都合と云えば好都合だったと云う事かい?」
 派江貫氏が均目さんの話しに多少の疑いを仄めかすような目をするのでありました。
「その点は本人に直接聞いて貰わなければ断言出来ないと始めに云ったでしょう」
(続)
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