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あなたのとりこ 195 [あなたのとりこ 7 創作]

 那間裕子女史は鮸膠も無いのでありました。
「片久那制作部長の方が未だシャープな感じがするかな」
 均目さんも頑治さんの意見に不同意のようであります。「陰気さはそっくりだけど」
「来見尾さんは片久那制作部長と違ってお酒もあんまり飲まないようだし、話しをしても冗談も云わないし、ちょっと気の利いた云い回しもしないし、全般に当り障りのない返事しかしないものね。如何にも頼りない感じがする。でもああ云う人は自分がこうと思ったら、それを絶対に変えないような結構頑固なタイプなのよね」
「確かに頑固は頑固そうだな。何となくあしらい難い人かも知れない。と云っても、前に会社に居た刃葉さんみたいなあしらい難さではないけれど」
「でも刃葉君はあれで、なかなか可愛いところもあったわよ」
 那間裕子女史は俄には頷かないで異見をものすのでありました。
「可愛いところなんかあったかねえ」
 均目さんは疑わしそうに笑うのでありました。
「やる事ががさつで間抜けなところが多かったし、それに結構自信家で、多分秘めた劣等感も一緒にあって、自分以外の人間は皆下らんヤツだと思っていた節が随所に見られたけど、でもそれだからこそ考えている事は単純明快と云うのか、判り易かったわ」
「それを可愛いと評価するのには那間さんが異性だからかな。同性からすると、やっている事と根拠の無いあの鼻持ちならなさとのギャップは、唾棄に値すると云うものだよ」
 均目さんはそう云って頑治さんに同意を求めるような目を向けるのでありました。頑治さんは八割方同意ではあるものの、頷かないで笑って返事を誤魔化すのでありました。
「元帳が判ったら、案外可愛いものよ。そんなに狭量にカリカリする事無いじゃない」
 那間裕子女史は余裕の笑みを浮かべてジントニックを一口飲むのでありました。
「いや、そうじゃないよ」
 均目さんは那間裕子女史に自分の男としての器量が疑われたと思ったためか、尚も反駁を企てるのでありました。「自己省察が甘いヤツは何かをやらせても結局、使いものにならないし、そんな自分を変えたいと云う気も無いとなると、それはもう救い難い」
「ご立派なご意見だけど、そう云う均目君はどうなのよ。均目君のプライドの高さとか人を侮って止まない目付きなんて云うのも、時々度し難いと思う場合もあるわよ」
「まあ、異性の那間さんとしては、そう云う均目君も可愛いと云う事になりますかね」
 何となく、二人の会話がこれ以上変な方向にエスカレートしないように、頑治さんは妙な仲裁を試みるのでありました。しかしこれは、余計なお節介、或いは無用な危惧と云うものかも知れないと、云いながら頑治さんはそこはかとなく思うのでありました。
「あたしと均目君が急に険悪な口論なんか遣り始めたと思って、オロオロたじろいで慌てて宥めに掛かろうとする唐目君も、なかなか可愛いわよ」
 那間裕子女史が先ずは頑治さんをからかってから、ジントニックを二口程飲んで口調を改めるのでありました。「ま、刃葉君の事は横に置くとして、来見尾さんは、未だそんなに話しをしたわけじゃないけど、何処か薄気味悪いところがあるのは確かね」
(続)
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