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あなたのとりこ 124 [あなたのとりこ 5 創作]

 頑治さんは居心地悪そうに那間裕子女史との脚の接触を、勿論その気持ちを噯にも出さずシレっとした顔で遣り過ごしているのでありました。まあ、このような意図しない偶然の女性との接触を歓迎する心根も、頑治さんの内には無い事も無いのでありましたか。

 この脚の接触は頑治さんがトイレに行こうと中座する時にようやく解消されるのでありました。それに頑治さんが立ち上がって那間裕子女史の背後に移動すると、頑治さんは更に驚くべき光景なんぞを目にしたのでありました。
 それは那間裕子女史を挟んで頑治さんの反対側に座っていた均目さんの胡坐の膝の上に、女史の片手が極自然な様子で載せられていたのであります。テーブルが陰になっていて明快には確認出来なかったけれど、しかし確かに那間裕子女史の片手は均目さんの膝上に在ったように見えたのでありました。何やら見てはいけないものを見たような気になって、頑治さんは目を背けて早々に座敷から下りてトイレへと向かうでありました。
 あの那間裕子女史は実はなかなかの食わせ者なのかもしれない、と頑治さんは放尿しながら考えるのでありました。一方で頑治さんに挑発的なちょっかいを出しながら、一方で均目さんの方にもちゃっかり媚態を示しているのであります。いや、今の段階ではそのようにも考えられると云う事以上ではないのでありますが。
 それにひょっとしたら均目さんと那間裕子女史は良い仲なのかも知れません。それも恐らく那間裕子女史の絶対的なヘゲモニーの下で。
 那間裕子女史は二人の関係に縛られる事無く奔放に振る舞って、それを均目さんが苦々しくかそれとも大きな包容力で受け止めていると云った二人の見取り図も想像出来るのであります。まあこれも、今のところ頑治さんの勝手な憶測以上ではないのでありますが、しかしこう云う頑治さんの勘は意外に的を射ている場合が間々あるのでありました。
 頑治さんが座敷に戻ると那間裕子女史は均目さんの傍を離れて、今度は袁満さんと出雲さんの間に座っているのでありました。そこではどちらの膝にも那間裕子女史の手は載ってはおらず、体と体の間隔もある程度の遠慮を表明したような接近具合でありました。
 頑治さんが元の席に座るとすぐに那間裕子女史はまた横に遣って来るのでありました。今度も横座りにした那間裕子女史の膝頭が頑治さんの大腿に触れるのでありました。
 明らかに袁満さんと出雲さんの間に在った時とは機嫌も様子も違って、如何にも親密な感じであります。その後、先程のアフリカ旅行の話しやらフラメンコギターの話しをしている時も、那間裕子女史は屡頑治さんの膝を掌で打ったり、肩先を叩いたり、二の腕を触ったりするのでありました。要するに頑治さんが居ない間ほんのちょっと袁満さんと出雲さんの処に愛想をしに行って、頑治さんが戻って来ると待っていたようにすぐに頑治さんの傍に座ると云うのは、明らかに頑治さんの方に袁満さんや出雲さんより、それにまた均目さんよりも、那間裕子女史の興味が多くあると云う左証になるでありましょうか。
 付き合いとして頑治さんは袁満さんや出雲さんより大いに短いと云うのか、今日初めて那間裕子女史と仕事以外の話しを交わした端であると云うのに、この隠そうともしない頑治さんへの那間裕子女史の好待遇は一体どう云う了見からなのでありましょうや。
(続)
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