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あなたのとりこ 331 [あなたのとりこ 12 創作]

「日比さんはどうするの?」
 考えあぐねて甲斐計子女史は、自分と同じく非組合員である日比課長に向かって縋るような視線を向けるのでありました。
「俺かい?」
 日比課長は自分を指差して見せるのでありました。「俺は未だ今のところは、何となくだけど、組合に入るのは止しておこうかなって思っているよ」
「日比さん、未だそんな事云って尻込みしているの?」
 袁満さんが眉根を寄せるのでありました。「律義に社長に忠義立てしている訳?」
「別にそんなんじゃないよ」
 日比課長は袁満さんの云い草に不愉快そうな声音で返すのでありました。
 そこへ片久那制作部長が下の社長室から戻って来るのでありました。甲斐計子女史を取り囲んでいた一同は一斉にそちらの方に視線を向けるのでありました。

 片久那制作部長は一直線に甲斐計子女史の方に来るのでありました。場所を空けるために袁満さんと均目さんが脇に退くのでありました。
「甲斐君の賃金も問題無く新体系の下で支払われる。何も心配無いからな」
 片久那制作部長は先ずそう云って甲斐計子女史を安心させるのでありました。
「当然、馘首も無いんですよね?」
 袁満さんが訊くのでありました。
「当然だ。そんなルール違反は俺がさせない」
 片久那制作部長は社長室に乗り込んで、社長の理不尽を強力に正してきたのでありましょう。しかし向後も何事に依らず全幅の信頼を置けない社長と土師尾営業部長でありますから、道理の前に無理が幅を利かす事態もあるかも知れません。この言葉は、そう云う事は自分が絶対許さないと云う片久那制作部長の従業員に対する確約でありましょう。
 この片久那制作部長の頼もしい言葉を聞いて、甲斐計子女史はようやく愁眉を開くのでありました。日比課長は「やれやれ」と呟いて溜息を吐くのでありました。
 他の一同も安堵の顔になるのでありあました。こちらの方は、なかなか会話の噛み合いそうにない判らんちんの社長や土師尾営業部長を相手に、甲斐計子女史への無体を組合として糾弾するストレスが無くなってホッとしたと云う思いからでありましょうか。
「しかし一応念のため、甲斐君も組合に入っておいた方が何かと都合が良いな」
 片久那制作部長は甲斐計子女史の組合加入を勧めるのでありました。「その方が今後社長に変な云いがかりを付けられないで済む。それから、日比さんも同じくね」
「俺も組合に入るんですか?」
 日比課長はまた自分の鼻先を自分で指差して及び腰を見せるのでありました。「俺は、多分大丈夫なんじゃないですかねえ」
「大丈夫だと、そんな無邪気にどうして云い切れるの?」
 袁満さんが日比課長を睨むのでありました。
(続)
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