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あなたのとりこ 329 [あなたのとりこ 11 創作]

 急場に於いては那間裕子女史の方が袁満さんより頼もしく見えるのでありました。より行動的だし、滅多に怖気付かず豪胆だし勇気もあるし、ひょっとしたら野間裕子女史の方が委員長として相応しいのかも知れません。いや、リーダーは一人先走るタイプよりは、多少呑気に構えている方が良いと云う意見もありましょう。どちらが良いのかは組織の性格にも依るでありましょうし、他の組合員との兼ね合いもあるでありましょうが。

 片久那制作部長を追うように出て行った袁満さんと那間裕子女史は、何故か程なく二人だけで事務所に戻って来るのでありました。
「二人で社長室に駆け付けたら、片久那制作部長から、取り敢えず社長と両部長の三人だけで話しをさせてくれって云われてね」
 袁満さんがあっさり戻って来た理由を説明するのでありました。
「なんだかお呼びでないって雰囲気だったわ」
 那間裕子女史も先程の勢いは何処にいったのか、何となく冷めた云い草でそんな事をものすのでありました。調子が狂ったと云う按配でありましょうか。
「それで云われる儘に帰って来たんだ」
 均目さんが少し呆れたように呟くのでありました。「しかし、従業員の賃金とか解雇に関する問題を提起された訳で、そうなら組合も当事者なんだから、袁満さんも那間さんも、あるいはどちらか一人でも、そこに立ち会うべきだったんじゃないのかな」
「後で片久那さんから組合の方に説明すると云う話しよ。それで納得出来ないようなら、改めて組合との団交の場を設けると云う片久那さんの意向みたいね」
 那間裕子女史が説明するのでありました。
「ここは先ず経営陣の会議、と云うのか、話し合い、だと云う位置付けみたいかな」
 袁満さんの弛緩した表情には立ち合いを免れた安堵が見て取れるのでありました。
「ふうん、そう云う事かねえ」
 均目さんは納得はしていない様子ながら、腕組みして一先ず首を縦に小さく一度動かすのでありました。「まあ、今更また向こうに戻っても如何にも間抜けな感じだけど」
 それから均目さんは甲斐計子女史の方を向いて語調を変えるのでありました。「こうなったら甲斐さん、今すぐ組合に入った方が良いよ」
「そうね。その方が良いわね。組合に入れば一人で対処するより遥かに心強いし」
 那間裕子女史も賛意を示すのでありました。「組合員じゃない事が、こんな理不尽な目論見の根拠らしいから、組合に入ればたちまちその根拠は消滅するわ」
 那間裕子女史はその後頑治さんの顔を窺うのでありました。頑治さんも賛同の言を発しろしろと云うサインがその目から頑治さんに向かって射られているのでありました。
「そうですね。こうなったら社長や両部長とのこれ迄の経緯もあるでしょうけど、組合に入った方が会社の中では何かと心強いですよね」
 頑治さんは那間裕子女史に促されたからと云うだけではなく、会社に長く居る先輩に対して不謹慎な云い草かも知れませんが、そう自分の意見を述べるのでありました。
(続)
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