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あなたのとりこ 277 [あなたのとりこ 10 創作]

「ところで袁満君、仕事の方はどうよ?」
 那間裕子女史が話題を変えるのでありました。
「全国の得意先を掌握して去年の売り上げとか、どの商品がどのくらい動いたかをちゃんと整理するだけでも大変ですよ。今の内は出雲君が未だ新しい仕事に動き出していないから、色々手伝って貰えるけど、一人で全国を熟すとなると見通しも立ちませんね」
「二人で回っていたところを一人でやる事になったんですからね」
 出雲さんが労うような云い方をするのでありました。
「出雲君の方は未だ全く動き出していない訳?」
「日比課長が未だ新しい仕事で動けないようですから」
「日比課長にしたら山尾主任が抜けて目算違いが生じたから、到底新しい仕事どころではないだろうな。もう一人の営業担当は相変わらずちっとも仕事をしないし」
 均目さんが敢えて土師尾営業部長への皮肉を込めるのでありました。
「そう云えば何か最近頓に、直行直帰が増えたよなあ、土師尾営業部長は」
 袁満さんが鶏の唐揚げに箸を伸ばすのでありました。
「一生懸命忙しくしている振りをしているんでしょう」
 均目さんが苦笑するのでありました。
「あの人の直行直帰は正真正銘のサボリだからなあ。前からそんな風だったけど」
 袁満さんも唐揚げの入った頬を膨らませて苦笑うのでありました。
「急用で連絡を取ろうと直行先に電話を入れたら、今日は来る予定は無いと云われたり、「上野の得意先に行った筈が、今上野駅だけど遅くなったので直帰すると云う電話がホームの公衆電話から入って、偶々後ろに流れている場内アナウンスを聞くと築地駅のものだったり、とか云う類の話しは袁満君からも甲斐さんや日比課長からも間々聞くわね」
 那間裕子女史が鼻を鳴らすのでありました。
「あの人はよく築地に行っているけど、築地に何の用があるんだろう?」
 袁満さんが疑問を呈するのでありました。
「本願寺があるからそこにでも行っているんでしょうね」
 均目さんが推察を述べるのでありました。
「ああ成程ね」
 袁満さんが納得するのでありました。「と云う事は、全く仕事とは関係ない訳だ」
「そうなりますねえ」
「俺も直帰の電話を貰って、浅草駅からだと云う事だったけど、矢張り丁度ホームのアナウンスが入って来て、それを聞くと市川とか云っていたっスよ」
 出雲さんも土師尾営業部長の疑念の多い行為を披歴するのでありました。
「市川と云うと、あの人の自宅のあるところだな」
「それは偶々、うっかり市川に帰って来てから電話をしたと云う事もあるだろう」
「そんなら今市川だけど、と云えば良いし、終業時間の一時間も前に、もう自宅のある市川に居るとなると、これは一時間以上サボっていると云う事でしょう」
(続)
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