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あなたのとりこ 247 [あなたのとりこ 9 創作]

「全共闘、かあ」
 これは派江貫氏の言でありました。何となく、シンパシーを感じられないと云った語調でありましたか。同じ左翼的な考えの人だと思うのでありますが、派江貫氏は嘗てあった全共闘運動をあんまり評価していない風でありました。その理由は特にはここで誰も聞かないのでありましたし、派江貫氏もその後に全共闘運動に対する論評を続ける意思は無さそうでありましたが、頑治さんはその派江貫氏の言に呼応して横瀬氏がニヤリと笑ったのが少し気になるのでありました。派江貫氏に同調する気持ちを表わす笑いのようでありますが、と云う事は横瀬氏も全共闘運動には批判的な立場と云う事でありましょうか。
「でもまあ、我々としてはすっきりした賃金体系を会社の中に確立さっせなければ、労働組合を創る意味は無いと云う事になるんじゃないかな」
 均目さんが力説するのでありました。
「それはその通りね。そうじゃないならあたし達は個別に、片久那さんなり土師尾さんなりと自分に見合う賃金の交渉をするしかないものね」
 那間裕子女史が均目さんに調子を合わせるような意見をものすのでありました。
「え、個別に交渉するんですか」
 袁満さんが及び腰を見せるのでありました。
「だから労働組合を創って団体交渉、と云う訳ですよ。ここで私が今更改めて、こんな応答をするのも何だか間抜けな感じがしますけどね」
 横瀬氏が袁満さんを見ながら少し皮肉っぽい感じで言葉を挟むのでありました。
「ああ、成程ね」
 横瀬氏が億劫そうな口調である謂いを殆ど意に介さず、袁満さんは素直に頷いて、一先ず個別交渉は無さそうな様子に無邪気に安堵するのでありました。
「山尾主任、片久那制作部長がムクれないような方策は何かありますかね?」
 均目さんが山尾主任に水を向けるのでありました。
「要するに役職手当で納得して貰うしかないんじゃないの」
 山尾主任が口を開く前に那間裕子女史がしゃしゃり出るのでありました。
「山尾主任もそう思いますか?」
 均目さんが山尾主任にもう一度考えの表明を促すのでありました。
「俺もそれしか考え付かないなあ」
「役職手当が多ければそれは基準内賃金に含まれるから一時金も高くなるし、基準内賃金が高いと云う事は時給も高くなるんだから、残業手当の計算でも有利になる訳よね」
 那間裕子女史がここでも山尾主任の前に嘴を開くのでありました。
「どうです、山尾主任?」
 均目さんはあくまで山尾主任の方に訊ねるのでありました。
「那間さんの云う通りかな」
 山尾主任はそう云って頷くだけでありました。何やら均目さんが山尾主任に代わって、この会議の進行役をやっているような按配だなと頑治さんは思うのでありました。
(続)
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