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あなたのとりこ 239 [あなたのとりこ 8 創作]

 横瀬氏が同調するのでありました。「袁満さんが土師尾営業部長に吠え面をかかしてやりたい、と云う気持ちが判るような気がする」
「そうだな。実質的に経営を任されていて、それに人事権も持っている者として、それはちょっと悪質と云うしかないな」
 派江貫氏も怒りを見せるのでありました。
「まあ、実質としては土師尾営業部長は会社の経営に関しては何も判っていないし、すっかり片久那制作部長におんぶに抱っこと云う調子ですけどね」
 均目さんが派江貫氏の怒りの表出にほんの少し水を差すのでありました。
「それならもっと悪質と云うものだ。それ以上に片久那と云う部長も性質が悪そうだ」
 派江貫氏は吐き捨てるのでありました。
「袁満君と出雲君、それに日比さんにも、これから先は残業手当が付くように計らってくれと、今度俺の方からも片久那制作部長に云って置くよ。不公平は良くないから」
 山尾主任が、この営業の三人を差し置いて自分に残業手当が付くと云うのが少し申し訳無いのか、そんな申し出をするのでありました。
「いや、そう云う交渉としてではなくて、その件も春闘のウチの要求として出すのが筋じゃない。従業員の賃金体系に関わる事なんだから」
 那間裕子女史がまるで窘めるように山尾主任の発言に異を唱えるのでありました。
「そうだな。製作とか営業とかに関わり無く、残業したらその分の残業代は誰にでも付くようにするのが原則だよな。勿論、業務の唐目君にも」
 均目さんが那間裕子女史の発言に賛同の意を示して、言を収めようとする辺りで頑治さんの方に顔を向けるのでありました。そう云えば頑治さんには残業手当が付いてはいないのでありました。これは慮れば業務の前任者の刃葉さんのせいでありますか。
 刃葉さんのがさつでちゃらんぽらんな仕事振りに残業手当を付けられないと、これは土師尾営業部長や片久那制作部長だけでなく他の従業員の総意でもありましたし、依って業務職には残業手当は付けないと云う前提が頑治さんにも適応されて仕舞ったと云う経緯でありますか。この点、頑治さんは刃葉さんの被害者でありますかな。ま、要は、残業手当が付くか付かないかは恣意的で、ちゃんとした取り決めは無いと云う事であります。
「袁満さんと出雲さんは仕事の変更を納得しているのかな?」
 横瀬氏が話頭を変えるためかそんな事を訊ねるのでありました。訊かれた袁満さんと出雲さんは、二人で戸惑ったような顔を見合わせるのでありました。
「俺の方はまあ、今迄やってきた仕事の、やり方の変更と云う事だから、勝手とか手際は判っていますよ。でも出雲君の担当地域も含めてだから相当きつくはなるだろうけど」
 袁満さんが云った後にげんなりと云った顔をして溜息を吐くのでありました。
「俺の方は未だ曖昧模糊とした感じっスかねえ」
 出雲さんは横瀬氏の質問にちゃんと答えられない事を申し訳無く思うような物腰でありました。遣れと云われた新しい仕事のイメージが全く湧いてこないと云ったところでありましょうか。それに日比課長との絡みもある事 でありますし。
(続)
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