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あなたのとりこ 196 [あなたのとりこ 7 創作]

「あの人はどういう仕事をしているんだったっけ?」
 均目さんが先ず那間裕子女史を、それから頑治さんの顔を見るのでありました。
「会社の本業は工作機械を作っているメーカーらしいけど、一方で王様のアイデアとか玩具屋なんかで売っている、知恵の輪みたいなものとか、トランプとか花札とかいろはカルタとか、卓上将棋盤とか囲碁盤とか、そんな風な小玩具も製造している、浅草の方に在る会社の社員だと仰っていたんじゃなかったかな」
 頑治さんが応えるのでありました。
「ふうん。遊び道具を造っている会社の社員にしては、遊びとは縁遠い風貌よね」
 那間裕子女史が意外そうな表情で云うのでありました。
「得てしてそんなものさ」
 均目さんは皮肉を云う時の笑いを浮かべて頷くのでありました。
「あの人はその会社でどんな仕事をしているのかしら」
「営業回りだとか聞きましたよ」
 頑治さんが応えるのでありました。
「どう見ても、新しい玩具のアイデアを出したりするような仕事とは思われないわね」
「本業の工作機器の営業の方だそうです。お菓子メーカーとか缶のジュースやお茶、それにコーヒーとかの飲料品メーカーがお得意先だそうです」
「唐目君は結構来見尾さんの事を知っているのね」
 那間裕子女史は改めて頑治さんの顔をまじまじと見るのでありました。
「あの居酒屋の宴会の席で偶々隣に座ったから、ちょこちょこっとそんな話しをしただけですよ。何となく手持無沙汰そうにしていらしたから」
「その会社、従業員はどのくらい居るの?」
「確か二十五人程とか聞きましたね」
「うちなんかの倍以上ね」
「メーカーだから何やかやでそのくらいの社員は居るだろう。それでもまあ、町工場と云った感じだろうから、製造業としては小規模と云うところかな」
 均目さんが解説を差し挟むのでありました。
「来見尾さんは結婚していて、小学校三年生のお子さんが居て、安月給だからこの先中学高校と、教育費の事を考えると頭が痛いとかおっしゃっていましたよ」
「へえ、結婚しているんだあの人」
 那間裕子女史はまたもや意外だと云う顔をするのでありました。
「この先、その辺りはウチの山尾主任とも色々話が合うんじゃないかな」
 均目さんがここで山尾主任の結婚の方に話しの舳先を曲げるのでありました。組合関連の諸事よりもそちらの方に均目さんとしては関心がある風でありますか。

 そうこうしている内に歳は改まり、六日間の年末年始休みもあっという間に過ぎるのでありました。頑治さんは特に何する事も無く一人で正月を過ごしたのでありました。
(続)
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