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あなたのとりこ 183 [あなたのとりこ 7 創作]

「ああそうですか。それならそれで。・・・」
 均目さんとしては情勢不利、と云ったところでありましょうか。均目さんが逐一無意味で些末な議論を小賢し気に持ち出す事で、徒に議事進行を滞らせていると云った雰囲気であります。そんな軽率なヤツと思われるのは大いに心外であるためか、均目さんはそう皮肉っぽく云ってからその後は目立って口を開くのを慎むのでありました。
「じゃあ、この闘争方針に異議はありますか?」
 山尾主任が一同を見回すのでありました。
「もう一度云ってみて」
 那間裕子氏が、目が合った時にそうリクエストしたので山尾主任はもう一度先の闘争方針を、紙を見ながら繰り返すのでありました。
「まあ、異議無しね」
 那間裕子女史は聞き終えて頷きながら山尾主任から目を離すのでありました。
「俺も異議無し」
 袁満さんも追随するのでありました。暫し間が空いて頑治さんも同意を表するのでありました。間が空いたのはその次に均目さんが態度表明する番だと思っていたからで、しかし均目さんが何も云わないものだから頑治さんが先に返答をしたためでありました。
「均目君は異議があるのかな?」
 山尾主任が不審そうな語調で訊くのでありました。
「いや、意義はありませんよ」
 均目さんは山尾主任の方を見ないで、はっきり不貞腐れた様子とは窺えないながらも、やや冷えた云い方をするのでありました。
「それじゃあ全会一致で、この闘争方針は採択されました」
 山尾主任が宣すると派江貫氏とそれまで言葉を殆ど発しなかった木見尾氏が、小声ながら力強く「よし」と云って拍手するのでありました。なかなか堂に入ったタイミングで、これはこう云う場でのこの人達の作法なのだろうと頑治さんは思うのでありました。
 釣られて那間裕子女史も袁満さんもそれから頑治さんも拍手するのでありました、均目さんも愛想から気乗りしない素振りの無精な拍手をするのでありました。
「それではこの後は組合正式結成迄の暫定的な委員の選出に移りたいと思います」
 山尾主任が次の議事に移ろうとするのでありました。

 山尾主任は暫し机上の紙に目を落としてから、徐に顔を上げて云うのでありました。
「こんな少人数だから立候補を募って投票して、とか云うのも如何にも大袈裟だから、こちらで一応案を練ってみたんだけど、・・・」
 山尾主任はまた目を紙に戻すのでありました。「ええと、公平に全員が役付きと云う事にして、委員長が山尾登、副委員長が円満丸也、書記が那間裕子、それから残る均目志信、唐目頑治、今日は出張で居ない出雲衣奈造の三人が執行委員と云う事でどうかな」
 山尾主任は云った後にまた夫々の顔を順に見渡すのでありました。
(続)
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