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あなたのとりこ 181 [あなたのとりこ 7 創作]

「要するにウチの問題も然る事ながら、ウチの組合の活動は全総連と云う上部団体の活動方針に強烈にコミットしなければならない、と云う事になる訳ね、そう云う方針なら」
 那間裕子女史が首を傾げるのでありました。
「いや、何を置いても単組個別の問題が最優先です。ただ加盟単組の中には贈答社よりも深刻な、雇用を守れるかどうかとか、或いは会社内差別の問題に直面しているところもあります。そう云った単組も仲間として応援をしていくと云う事ですよ。全総連の方針を無理強いすると云うのでは全くありませんから、そこは誤解の無いように」
 横瀬氏が一応頷くのでありました。
「持ちつ持たれつ、と云う事だよ」
 山尾主任がその後に空かさず続けるのでありました。
「まあ、それはお互い様と云う事だからなあ」
 袁満さんが横瀬氏及び山尾主任の説明に理解を示すのでありました。
「お互い様と云うのなら、ウチの新たに結成する組合に対して、全総連ではどのような具体的な支援が予定されているのかしら?」
 那間裕子女史はもう一度首を傾げながら、敢えて横瀬氏や山尾主任の方に視線を向けないで独り言のような体裁で呟くのでありました。
「そうですねえ、今の時点であれこれ明確なところを云うのは何ですが、今迄の事で云うなら、勿論全総連は当該単組の希望に沿うようにあらゆる支援をいたします。それに一例ですが既存の組合の結成までの色々なノウハウや経緯なんかをその単組の人に来て貰って直にレクチャーして貰えます。組合結成の経営への通告及び要求提出の日には全総連中央は勿論、小規模単組連合や千代田区共闘のお茶の水や神保町界隈に在る単組、それに恐らく出版関連や卸業関連の単組等が街宣車を動員して百人規模の支援集会を会社前で行います。これは結構界隈の耳目を引きますから経営への強烈なプレッシャーになりますよ」
「へえ、それは面白そうだな」
 横瀬氏の言の後に袁満さんが目を輝かせて云うのでありました。「社長や土師尾営業部長の慌てふためく様子が今から目に浮かぶなあ」
 袁満さんはこの支援集会を痛快な意趣返しの行動と捉えたようでありました。
「そう思うだろう。一泡吹かす絶好のチャンスだ」
 山尾主任も同調して見せるのでありました。
「土師尾さんの狼狽する姿を見るのは決して不愉快では無いけれどね」
 那間裕子女史も意地悪そうに笑みながら面白がるのでありました。
 この三人の喜び様に対して、均目さんはげんなりと云った表情を浮かべているのでありました。社長や土師尾営業部長の醜態を見て留飲を下げるために組合を結成しようとしているのかと、少々あきれていると云ったところでありましょうか。
 頑治さんも大方に於いて均目さんと同じような心持ちでありましたか。頑治さんも袁満さんや山尾主任、それに那間裕子女史と云う先輩三人のあっけらかんと呑気に面白がる様子が、不謹慎にも如何にも頼り無いようにも見えるのでありました。
(続)
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