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あなたのとりこ 149 [あなたのとりこ 5 創作]

「二人共社員歴も長いし、大日本地名総覧社時代からの人だから」
 つまり日比課長と甲斐計子女史は会社での年季が長い分、土師尾営業部長や片久那制作部長との関係の濃密さは自分達とは違うだろうし、年齢にしても日比課長は両部長より上で甲斐計子女史は同年齢でありますから、気分的な近しさは向こうの側にあるように思えると云う事を山尾主任は云っているのでありましょう。
「誼と云う点で俺達より両部長の方により近いと云う事か」
 均目さんがまるで独り言のような云い方をするのでありました。「だからここで話した内容が、後ですっかり両部長の耳に流れる危険があるって事だ」
「ま、その危険も無いとは云えないからね」
 山尾主任は警戒心を披歴しながらコーヒーを一口飲むのでありました。
「二人を呼ばなかった理由は判ったわ。それは良いとして早く本題に入りましょうよ」
 那間裕子女史が集まった本来の目的であるボーナス支給日の対応についての話し合いをせかすのでありました。この会合の後に、何か他の用があるのかしらと頑治さんは思うのでありましたが、それは特に訊く必要も無いのでありました。
「じゃあ先ず、幾つかのケースを想定して対応の仕方を決めて置こう」
 議長格の山尾主任が四人の顔を見渡すのでありましたが、四人は特段異議が無かったから夫々に頷いて見せるのでありました。その頷きを確認して、山尾主任は空気を改める心算か一呼吸置いてから後を続けるのでありました。
「先ず例年より少ないながら一応、二か月分と云う支給額があった場合だけど」
「まあ、額には不満はあるけど、でも通例に則った支給方法なんだから、それは納得するしか無いかな。今迄も額の多い少ないはその年に依ってバラついていたから」
 袁満さんが顰め面をして口を尖らせながら繰り言みたいに云うのでありました。
「そうね。二か月だった事も過去にあったかな」
 山尾主任が頷くのでありました。「じゃあ、この場合は特に何も対応しないで、一応素直に貰って置くと云う事で良いかな?」
 山尾主任が一同を右回りに見回すと、袁満さんと均目さんは渋面で頷いて見せるのでありましたが、那間裕子女史は目立って面白くなさそうに眉間に皺を寄せてゆっくりと首を横に何度か振るのでありました。しかしこの首の横振りは不同意を表明していると云うよりは、仕方が無いと観念する気持ちを力無く表する仕草でありましたか。
「じゃあ、一か月分だったら?」
 山尾主任がそう云いながらまた一同を見回すのでありました。
「これも支給方法は問題ないから、納得するしかないか」
 袁満さんがさっきより余程口を尖らせるのでありました。
「いや、一か月となると、おいそれとは納得し難いなあ」
 均目さんがすぐに声を上げるのでありました。
「そうね、一か月は少なすぎるわね。今までもそんな少額は無かったんだし」
 那間裕子氏が空かさず同調するのでありました。
(続)
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