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あなたのとりこ 148 [あなたのとりこ 5 創作]

 頑治さんは集荷を依頼する電話を運送会社にかけるのでありました。
「トラックが来たら後は俺が出荷しますから、もうここは上って構わないですよ」
 頑治さんは出雲さんから発送指示書を受け取りながら云うのでありました。
「それじゃあ、俺は上がります。後はよろしくお願いします」
 明日から出張に出る出雲さんが云う、後はよろしく、と云う言葉には、今梱包した荷物の出荷の件もあるけれど、冬のボーナスに関しての事もあるのかなと頑治さんはふと考えるのでありました。しかし出雲さんのあっけらかんとした表情からは、特段そんな複数の意味あいを籠めた言葉のようではないのでありました。頑治さんの気の回し過ぎでありましょう。でも、はてさて、冬のバーナスの支給は一体どうなるのでありましょうや。

   冬のボーナス

 月曜日に集まったのは東北出張に出ている出雲さんを除いた五人でありました。五人は会社が引けた順に三々五々、まあ、正確には二一二と云う風になるのでありましたが、御茶ノ水駅に程近いウィーンと云う大きな喫茶店の二階席に参集するのでありました。最後の均目さんと那間裕子女史が来た時には午後六時半を回っているのでありました。
 頑治さんは五時半過ぎに、日曜日に信州方面出張から帰って来て、本来は代休を取る心算でいたけれど、この会合のために態々出社して来た袁満さんと一緒に五人の中で最も早く到着するのでありました。すぐ後から三人がぼちぼち来るからとウエイターに告げて六人掛けの席に着くと、二人はホットコーヒー-を注文するのでありました。
「何か動きはあったのかな、金曜日以降」
 袁満さんがコーヒーが来る前に頑治さんに訊くのでありました。
「いや、特には。土曜日と日曜日は会社は休みでしたからね」
「ああ、そりゃあそうだな」
 袁満さんはそう云って頷くのでありました。まあ、そんな事は判り切った事には違いないのでありましょうし、袁満さんもそれを承知の上で、同席者の頑治さんとの間の手持無沙汰を紛らわす一種の愛想として皮切りにそう云う事を訊いたのでありましょう。
 そうこうしていると山尾主任が一人でやって来るのでありました。山尾主任もコーヒーを注文してそれが席に運ばれて来る辺りで、那間裕子女史と均目さんが十分程の時間差で到着するのでありました。二人共皆と同じくコーヒーを注文するのでありました。
「ところで、今日のこの会合に、同じ従業員で立場としては俺達と無関係ではない、日比さんと甲斐さんの二人は、特に呼ばなくて良かったんですかね?」
 袁満さんが山尾主任に向かって訊ねるのでありました。
「それは俺も考えたんだけど、今日の処は何となく遠慮があって、声は掛けなかった」
 山尾主任がコーヒーカップを口から離して云うのでありました。「同じ従業員と云っても、あの二人は俺達とは少し違うような立場だからね」
「まあ確かに。それに特に甲斐さんと俺達の間には、ちょっと距離感もある感じだし」
(続)
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