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あなたのとりこ 130 [あなたのとりこ 5 創作]

 そんな均目さんの様子は、那間裕子女史と均目さんが別にデキていると云う訳ではないと云う証明のようにも頑治さんには思えるのでありました。しかしだからと云ってこの儘那間裕子女史の自分の腕への接触を許し続けるのは、何やら夕美さんと云う存在に対する忠義立て上、慎に律義でないような気もしてくるのでありました。
 頑治さんはそれとなく那間裕子女史の接触から自分の腕を遠ざけるように、那間裕子女史に対して背中を向けるようにほんの少し体を捻るのでありました。如何にもはっきり接触を拒否したと思われるのも申し訳無い気がするものだから、頑治さんはその動きの延長から、腰の捻転運動及び肩の内転ストレッチのような動作を始めるのでありました。
 この期で急にそんな事を始める方が余程不自然であろうかとも思うのでありましたが、まあ、その敢えての不自然さを以って那間裕子女史に自分の腕への接触を控えて貰いたいと云う頑治さんの意をやんわり伝える事が出来れば、それはそれでOKでありますか。これは一応頑治さんの、会社の先輩に対する気遣いであります。

 ある時点から兆候も無く、那間裕子女史は急に寡黙になるのでありました。それとなく窺うと瞑目して首を項垂れているのでありました。なかなかハイピッチでジントニックを呷っていたから、ここに来て一気に酔いが回ったものと推察されるのでありました。
「那間さん、大丈夫?」
 均目さんが項垂れた那間裕子女史の顔を下から覗きながら訊くのでありました。那間裕子女史は瞼を開く事無く不明瞭な声で生返事をするのでありました。均目さんはその様子を見て今度は頑治さんの方に視線を移して苦笑いながら続けるのでありました。
「何か、竟に酔いつぶれたと云った感じだなあ」
「そうだな」
 頑治さんも那間裕子女史を横目で見るのでありました。上体が不規則に揺れていて、これは目が回っているのと半睡眠状態のために体を直立固定出来ない故でありましょう。
「じゃあ、ぼちぼち家に引き上げるか」
 均目さんが二杯目のジントニックのを空けてから云うのでありました。
「那間さんは一人で帰れるかな」
 頑治さんも自分のグラスを干してから腕時計に目を遣るのでありました。未だこの時間なら終電には間に合いそうであります。
「ま、この様子じゃ無理だな。俺が送って行くよ」
 均目さんが立ち上がって那間裕子女史の片方の脇に腕を差し入れて立たせようとするのでありました。完璧に酔い潰れている訳ではないようで、那間裕子女史はすっかり体を均目さんの腕に預けていながらも、ヨロヨロと立ち上がるのでありました。
「歩けるかい?」
 均目さんが訊くと那間裕子女史は先程と同じ生返事をするのでありました。それからガクンと首を後ろに反らして、均目さんの肩にすっかり頭を預けるのでありました。
「これじゃあ、新宿駅まで屹度歩けないぜ」
(続)
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