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あなたのとりこ 123 [あなたのとりこ 5 創作]

「仙川駅の近く、と云うにはかなり遠いけど、でも、そこよ。良く知っているわね」
「大学時代の友人が一時その学校に通っていた事があるので、名前は知っています」
「ふうん。唐目君は通わなかったの?」
「ええ。俺は外国語の勉強はあんまり好きな方じゃないですから」
「那間さんは来年か再来年、アフリカのケニア辺りに旅行する予定だから、それで今必死にスワヒリ語を勉強しているんだよ」
 均目さんが女史の事を良く知らない割りにはそんな事を紹介するのでありました。
「へえ、ケニア旅行ですか」
 頑治さんは一応礼儀から感心して見せるのでありました。ケニア旅行と云うだけで特に感心するべき理由は無いであろうとは思うのでありましたが。
「そう。大学時代の友人と前から約束しているの」
「なんでまた、ケニアなんですか?」
「これでもあたし大学時代は一応、探検部に入っていたのよ」
「ほう、探検部ですか」
 頑治さんはまたもや無意味な感心をして見せるのでありました。その頑治さんのサービス精神に意を得たのか那間裕子女史は大学時代の探検部での冒険譚やらを披露してくれるのでありました。それからハワイだの合衆国本土だのヨーロッパだのの旅行が如何につまらないかとか、どうせ海外に行くのならアフリカか中央アジアか南極辺りに行くべきだとか、女史独自の海外旅行論を頑治さんの前に披歴して見せるのでありました。
 何かと奇を衒う傾向大なるものがあるし、所謂先進国への旅行をなんでそんなに毛嫌いして見せるのか頑治さんには理解不能でありましたが、まあ、那間裕子女史がそう云うのなら頑治さんが、賛意を示す謂れは無いけれど、それはそれで別に反駁するような類の話しでも無いでありましょう。その決めつけとか偏見とか、ある種の見栄の強い話し振りに些か辟易とする部分はあるにしろ黙って承って置けば良いのでありますし。
 それより何よりその話しの内容は別にして、頑治さんには大いに気になるところがあるのでありました。それは竟々話に熱が入るためか那間裕子女史の体が次第に頑治さんのすぐ傍に接近して来て、女史の胡坐に組んだ足の尖った膝が、テーブルの下で頑治さんの胡坐の大腿部外側に強く押し付けられるような按配になった事でありました。
 そんな接触なんぞには意識がまるで無いためか、それとも敢えて態とそう云う風にしているのか、那間裕子女史は膝の接触を解消しようとはしないのでありました。むしろ体の角度に依って女史の膝が頑治さんの太腿の上に乗り上げている場合もあるのでありましたし、互いの太腿が広い面積で密着するような事態も現出するのでありました。
 那間裕子女史の体温がジーパン越しに頑治さんの脚に浸透して来るのでありました。頑治さんは何となく内心オドオドとするのでありましたし、ちょっと艶めいた気分にもなるのでありました。何気なく接触を解消する事も出来たでありましょうが、そんな事をすると那間裕子女史が全く気にもしていない些事に、頑治さんが過剰反応をしたように捉えられて仕舞うのも何となく癪なような気もするのであります。
(続)
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