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あなたのとりこ 118 [あなたのとりこ 4 創作]

「地位の上下関係の秩序以上に、と云う事かな」
「そうね。何かオドオドしているようにも見える」
 その辺の詳しい事情に関しては頑治さんには全く判らないのでありました。

 月曜日に池袋の宇留斉製本所から帰って、納品書を制作部の山尾主任に渡した後、頑治さんが引き取って来た荷を車から下ろしているところに、山尾主任が上の事務所から下りて来るのでありました。何か納品書の記載に不首尾があってその確認に来たのかと思うのでありましたが、山尾主任の用件はそうではないのでありました。
「唐目君、ちょっと良いかな」
 山尾主任は頑治さんを倉庫の奥に誘うのでありました。
「納品書の記載に不備がありましたか?」
 作業台の前で頑治さんが訊くと、山尾主任はしかつめ顔をして頑治さんを見ながら首を横に何度か振るのでありました。
「唐目君も今度の冬のボーナスが出ないと云う事を聞いているだろう?」
「ええ、何となく知っています」
「冬のボーナスが若しカットになるなら色々困るので、その件について従業員全員で話し合いを持とうと云う事になってね、明後日の水曜日の、仕事が終わってからなら銘々の都合が良さそうなんだけど、唐目君はどうかな?」
「大丈夫だと思いますが」
 頑治さんはほんの少し考えてからそう返答するのでありました。
「じゃあ、予定に入れて置いてくれるかい」
 山尾主任は頑治さんの了解に二度頷きを返すのでありました。
「従業員全員と云う事は、両部長も入れて、と云う事ですか?」
 頑治さんは山尾主任の二度目の頷きが終わったところで訊くのでありました。
「いや、片久那制作部長と土師尾営業部長は来ないよ。声も掛けていないし。それから日比さんと甲斐さんも今回の会合には誘っていない」
「じゃあ、出席するのは、・・・」
「俺と唐目君の他には、制作部の那間さんと均目君、それから営業部の袁満君と出雲君と云う面子だな。全部で六人と云う事かな」
「ああそうですか」
 出席は社員十人中の六人と云う事だから、山尾主任は全従業員と云ったけれど、そうではないようであります。両部長も日比課長も役職に就いているけれど厳密な区分としては従業員の内でありましょうし、第一、主任と云う役職の山尾さんは除外されてはいないのであります。況してや甲斐計子女史は一人で経理を担ってはいるけれど別に役職に就いているのでもないのでありますから、こちらは紛う事無く従業員の内でありましょう。
 要するに、年齢が近い普段から比較的気さくな同士の集まりと云う了見のようでありますか。まあ新人の頑治さんは未だそんなに気さくな方ではないのでありますが。
(続)
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