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あなたのとりこ 95 [あなたのとりこ 4 創作]

「あの人は経営学部の出身じゃなかったかな」
 日比課長が横から補足するのでありました。「大学に入った時には神道にも仏教にも全然興味は無かったんじゃないかな。何かしらの個人的な事情があって仏教に目覚めたと云うような話しを聞いた事がある。その事情とやらは具体的には知らないけど」
「土師尾営業部長は片久那制作部長と同じ全共闘世代ですよね」
 頑治さんは確認するのでありました。
「そうね。あの二人は同い歳だからね」
「大学時代に接点は無かったにしろ、一方は政治に、一方は宗教に走った訳ですね」
「そう云うとあの二人を同列に並べているみたいだけど、片久那制作部長はバリバリの闘士で今でも何となくその面影は窺えるけど、土師尾営業部長の方はどんなものかな」
 日比課長は宗教者としての土師尾営業部長の方には懐疑的なようでありました。
「そう云えば均目さんが土師尾営業部長の事を、葬式の作法とか仏壇のディテールなんかには詳しいけど、肝心の親鸞やら蓮如の思想についてはありきたりの知識しかないようだって云っていましたね。一般的に坊主が説法でやる程度で本人の思考の深化は無いと」
 出雲さんが話しに加わるのでありました。
「親鸞とか蓮如とかだから、宗旨は浄土真宗と云う事ですかね」
「俺は仏教についてはド素人だから、何宗かは良く知らないっスけど」
 頑治さんの質問に出雲さんは少したじろぎを見せるのでありました。
「何かの折に、悪人正機説、とか云っていたから、多分そうだろうね」
 日比課長が横から頷くのでありました。
「でも、均目さんがそんな話しを土師尾営業部長とする折があったんだ」
 その点が頑治さんには少し意外でありました。
「去年の社員旅行で伊東温泉に行ったんだけど、その時の部屋割りで均目さんと俺とそれに土師尾営業部長が偶々一緒の部屋になったんですよ。多分その時っスね、二人がそう云った事について話す機会があったとすれば」
 出雲さんが経緯を推測するのでありました。「俺は袁満さんと日比課長と三人で、街に繰り出して遅くまで場末のスナックで飲んでいたから、その場には居なかったけど」
「ああ、あのスナックね」
 日比課長がそう云って苦笑うのでありました。「あそこは参ったなあ」
「寒いからって何処でも良いから入ったんだけど、何となく店の装飾は古びているし、ソファーは破れているところが目立つし、中に居るお姉ちゃんはちっとも若くないし、図々しいし騒々しいし、がさつだし下品だし、商売っ気丸出しだし」
 袁満さんが思い出してげんなり口調で愚痴を云うのでありました。
「そう云う割には袁満君が一番ノリノリで、お姉ちゃん達とキャアキャア云いながら一気飲み合戦したり、オッパイに触ったりちょっかい出して戯れていたくせに」
 日比課長がからかうのでありました。
「それは日比さんの方でしょう」
(続)
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