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あなたのとりこ 80 [あなたのとりこ 3 創作]

 要点ズバリの口は片久那制作部長の方でありましょう。依ってこちらは如何にも愛想の無い、時に辛辣に聞こえて仕舞うような物云いでありますか。
「何か、無駄にくどいと思うだろう、土師尾営業部長の話し振りは」
 均目さんがコーヒーの紙コップを口から離しながら云うのでありました。
「そうね、確かにくどい。仕事の指示にしても同じ事を何度も云うね」
 頑治さんは苦笑しながら応えるのでありました。
「自分が頭が悪くて物事を一回で理解出来ないものだから、他人もそうだと思っているんだろう。だからうんざりするくらいくどくどと何度も念を押そうとするんだ」
「今まで別に込み入った仕事を頼まれた事が無いし、実際そんな込み入った梱包仕事も無いんだろうけど、確かに細々と、云わずもがなの指示が多いね」
「要するに他人をまるっきり信用していないんだろうな。それと、自分が頭が悪いと云う事が自分で判っていないから、余計人を苛々させるようなもの云いをする」
 均目さんは端から土師尾営業部長を侮っているようでありました。
「人を信用しないのは、こう云うのも何だけど、主に指示する相手が刃葉さんだからと云うのも、ひょっとしたらあるんじゃないかな」
「いやいや、刃葉さんが入社する以前からあんな調子だったようだぜ」
「ふうん。じゃあ、元々の性質と云う事か」
「いくら人材が居ないとは云え、あの人が云ってみれば形式的にはトップなんだから、ウチの会社も先が見えているかも知れない」
「形式的なトップ?」
 頑治さんはその言葉が上手く呑み込めないので、繰り返してから困惑気な目をして均目さんの顔を見るのでありました。「それなら実際のトップは?」
「実質上のトップは片久那制作部長に決まっているよ」
「形式的とか実質上とか、その別はどういう事なんだろう?」
「会社の収支の状態やら従業員各個の仕事振りやら、そう云った管理については片久那制作部長が全部掌握しているから、実質的に会社のトップと云う訳だね」
「土師尾営業部長は部長として、どの方面の管理の仕事をしているのかな?」
「何もしていないよ」
 均目さんは毛程も遠慮の無いきっぱりとした云い方をするのでありました。
「でも眺めていると会社の代表格は土師尾営業部長と云った感じだけど」
「ま、代表は社長と云う事になるけど、社長は会社の運営に特に口出しも方針を示す事もないからね。黒字か赤字か気にしているだけのお飾り社長と云ったところかな」
「お飾り社長、ねえ」
 またもや頭に妙な修飾語の付いた役職が聞こえて来るのでありました。
「社長の事は今は置くとして、実際のところ土師尾営業部長は何の管理の仕事もしていないよ。単なる営業社員以上じゃないね、あの仕事振りは」
「じゃあ、何を以って部長と云う役職を拝命しているんだろう?」
(続)
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