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あなたのとりこ 55 [あなたのとりこ 2 創作]

「へえ。じゃあこれから一緒に仕事をしていく間柄になるの?」
「いや、後二か月程で会社を辞めるんだよ。その後釜として俺が雇われた事になる」
「ああそう云う経緯なの」
 夕美さんは刃葉さんがもうすぐ会社を辞めるのだと云う話しを聞いて、何故か少しがっかりしたような云い草をするのでありました。自分と同姓の人が頑治さんとこれから先も一緒に働く訳ではないと云う事に、全く大した意味も無くではありましょうが、何となくちょっと残念な心持ちなんぞがしたからでありましょうか。
「この先二か月、引き継ぎでその人からあれこれ業務仕事を教わらなくちゃならない」
「短時間だけど先輩になるんだものね。色々頼りになりそうな人?」
「うん、まあ、・・・」
 頑治さんは口籠もるのでありました。別に羽場さんの人となりを、頑治さんが持った印象等を正直に且つ面白可笑しく夕美さんに話しても構わないのでありましょうが、夕美さんと同姓の人と云う事もあって、まあ、まさか夕美さんに限ってそんな不条理は無いでありましょうが、頑治さんの語りを不愉快に思うような事があっては拙いと頭の隅で危惧したからでありました。全く以ってこれは無用な気遣いでありましょうが。
「他にはどんな人が居るの?」
 夕美さんは別に刃葉さんの話しには拘る風も無いのでありました。
「営業部長と営業課長、それに営業部員が後二人、と云っても一人は出張で居なかったから今日はもう一人の方としか顔合わせしなかったけどね。それに経理の女の人が一人。制作部には制作部長と制作主任、それから男女一人ずつの部員、と云ったところかな」
「営業部は営業課以外に他の課がある訳?」
「いや、そう云う事ではなくて、単に役職手当支給の関係で課長と云う役職も設けてあると云う事らしいよ。課長当人が居酒屋の宴会の席でそんな事を云っていたから」
「営業部と経理部と制作部の三部構成になる訳?」
「経理部、と云うのは特別設けられてはいないようだな。だから経理担当の女の人は平の社員で課長と云う肩書きはないし、他に部下も居ないもの。まあ、強いて云えば営業部に経理課も属すると云えなくも無いかも知れないけど、でもそうでもないようだし」
「その辺は曖昧な訳ね」
「そう。はっきりした区分として経理部とか経理課があるんじゃないようだよ」
「業務部も無いのね?」
「無いよ。業務の仕事は営業部関連の仕事も制作部関連の仕事もあるけど、でも、部とかどちらかの部の下の課として厳密に区分けされているんじゃないからね」
 若し業務部と云う部署が存在するとすれば、あの羽場さんが業務部長と云う事になるのかも知れませんが、どう考えてもそれは無い話しでありましょう。
「経理と同じような括りね」
「そう云う事になるかな。まあ総勢十一人、社長も勘定に入れたら十二人の零細企業だし、そうやたらと部だの課だのと区分していても無意味だろうからね」
(続)
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