So-net無料ブログ作成

あなたのとりこ 50 [あなたのとりこ 2 創作]

「ふうん。ま、そう云う事もあるわね」
 夕美さんはあっさり納得したようでありました。「で、どう、初出社の感想は?」
「そうねえ、今までやって来たアルバイトの感じとそう変わらないってところかな」
「ああそう」
 頑治さんの冷めた云い草を聞いて、夕美さんの声には何処かがっかりしたような色合いが窺えるのでありました。
「この先暫く働いてみないと、良い就職だったか悪い就職だったかは判らないけど」
「それはそうよね。でもそう云う風に云うところを見ると、これから先ずっと勤められそうな感触は持てたって事かしらね?」
「そうだね。今日の初出社でいきなりこりゃダメだと云う気にはならなかったかな」
「業績とかは堅実なの?」
「それは今の段階で未だ良くは判らない。でも今日接した社員の間には切迫した業績への不安は特に無かったように思ったけどね」
 頑治さんは袁満さんの穏やかそうな顔を思い浮かべるのでありました。
「社員の人達とは上手くやって行けそう?」
「多分大丈夫じゃないかな。取り立てて灰汁の強い人は居ないみたいだし」
 とは云うものの、業務仕事の先輩である刃葉さんはちと癖の強い方かなと頑治さんは考えるのでありました。それに片久那制作部長も食えない人のようでありますし。
「じゃあ、まあ、今日の段階では上々と云う感触?」
「まあ、中の上、いや中の中と云った辺りかな」
「可も無く不可も無いってところ?」
「今までの学校やアルバイト先でも色んな人が居たし、そのキャラクター幅の中から極端にははみ出る人は居なかったってところかな」
「ああ成程ね」
 こんな曖昧な云い回しの説明で夕美さんは本当に成程と思ったのかのかしらと頑治さんは少し疑うのでありましたが、まあそれはそれとして。
「ところで明日逢えるかな?」
 頑治さんは話頭を曲げるのでありました。
「そうね、昼の三時以降は講義も無いから多分大丈夫だと思うけど」
「今日の首尾は電話では良く話せないから逢って話すよ」
「そうね。その方が良いわね。頑ちゃんは明日大丈夫なの?」
「多分六時、いや六時半には退社出来ると思うよ」
 今日の就業時間後に急な梱包と発送の仕事があったことを踏まえて、頑治さんは無難な辺りを提示するのでありました。
「判った。じゃあ六時半に御茶ノ水駅の改札辺りで待ちあわせる?」
「いや、レモンにしよう」
 レモンと云うのは喫茶店の名前でありました。
(続)
nice!(8)  コメント(0) 

nice! 8

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。