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あなたのとりこ 47 [あなたのとりこ 2 創作]

「いや、そうでもないな」
 均目さんが首を振るのでありました。「言葉の端々から窺っていると片久那制作部長はあんまり、山尾さんの事を買ってはいないような気配だよ」
「そうなんですか?」
「何か物足りないヤツ、と云ったように感じているんじゃないかな」
「それは仕事の上で、と云う事でしょうか?」
「まあ、仕事でも、その人間的在りようでも」
「人間的在りよう?」
 それは全否定とも取れる云い方だと頑治さんは思うのでありました。
「万事に今一つ甘っちょろいと思っているんじゃないかな」
「甘っちょろい、ですか?」
「何となくやる事為す事総てが不徹底な印象があるような感じかな」
「それにどちらかと云うと陰気な感じがする」
 日比課長が口を挟むのでありました。「細かい事にうじうじと拘ったり、別に何て事無く聞き流せば済むような話しを聞き流せなくて執拗に食い下がったりする傾向がある」
「そう云う日比さんは、ちゃんと拘らなければいけないものも、チャラチャラと冗談めかして誤魔化して仕舞う傾向があるけどね」
 袁満さんが日比課長に遠慮がちな口調で繰り言するのでありました。
「ああそうかい。でもこの世の中、大概はそうやって遣り過ごせばそれで済む事が殆どじゃないかい。妙に深刻振ると大体に於いて話がややこしくなる」
「でも日比さんの場合もうちょっとくらいは色々締まりがある方が良いとおもうけど」
「俺だって締めるところはちゃんと締めているさ。その締め方が手際が良くてスマートでさり気無いから傍目にはそう見えないかも知れないけどね」
「よく云うよ」
 袁満さんがげんなり顔をするのでありました。その袁満さんを煙に巻くように哄笑しながら日比課長は、もうすっかり冷めて仕舞ったビザを一切れ口の中に放り込んでくちゃくちゃと音を立てながら咀嚼するのでありました。
「物事に拘らないと云えば、ウチの会社では刃葉君が一番格だろう」
 日比課長が咀嚼音の隙間からそんな事をものすのでありました。
「あの人は、もう、別格だよ」
 ここからまた刃葉さんの事に話題が移るのでありました。「拘らないと云うよりは、万事に上の空でがさつで好い加減、と云った方が良いかな」
 袁満さんもピザを一切れ頬張って、日比課長よりは控え目ながらも咀嚼音を立てて顎をせわしなく上下に動かすのでありました。
「刃葉さんは空手をやっているそうですね」
 丁度袁満さんが今口に入れたピザが最後の一切れだったので、頑治さんはその横の胡瓜の細切りスティックを摘みながら袁満さんに訊くのでありました。
(続)
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