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あなたのとりこ 46 [あなたのとりこ 2 創作]

「袁満さんも山登りのクラブにでも入って血眼で嫁探しをしますか」
 均目さんがからかい口調で云うのでありました。袁満さんの人の好さに安心して、一つ年下の筈の均目さんも遠慮が無いようであります。
「俺は山登りとかはそんなに好きじゃないもの」
「只管、女が好きなんだもんなあ」
 日比課長が横から戯れ言で混ぜ返すのでありました。
「山登りとか、健康的で良いじゃないですか」
 均目さんがやや太り気味の袁満さんの体を背凭れに少し身を引いて、俯瞰するような目付きをしながら云うのでありました。
「まあ、ハイキング程度ならね。山登りのために体を鍛えたりするのはどうもなあ」
「山尾さんは体を鍛えているのですか?」
 頑治さんが訊くのでありました。
「そうだろうな。時々トレーニングジムに通っているみたいだし」
「山登り一直線といった感じですね」
「山尾君はあれで他に趣味も無さそうだしなあ」
 日比さんが三杯目の水割りを、今度は均目さんに任せずに自ら作りながらいうのでありました。均目さんが先程作ったのよりはより濃い色をしているのでありました。
「時々、山登りに行きたいと云う事を云うのに、山が俺を呼んでいる、とか聞いているこっちがちょっと鼻白むような気取った、しかもありふれた科白を吐いたりする時があってげんなりするけど、まあ、山登りのためなら結構ストイックな方かな」
 この均目さんの科白には一種の皮肉が込められていると窺えるのでありました。
 山尾さんと云う人は、山男に屡ありがちな印象ではありますが朴訥で頑固で人交わりは得意ではないけれど、しかし心根の多くの部分で浪漫的な色を持った人と云うイメージでありますか。そう云う人が日比課長が云うように、吝嗇から山登りの代わりに新宿や池袋のラブホテルに彼女と通っているとは頑治さんには思えないのでありました。
「片久那制作部長も山登りをする人だよ」
 袁満さんが頑治さんにそんな情報を伝えるのでありました。
「へえ、そうなんですか」
「こっちもかなり本格派だぜ。もう今は殆ど登らないようだけど」
 日比課長が補足するのでありました。
「片久那制作部長は体格が良いから、そう聞くと如何にも、と云ったところですね」
「片久那制作部長も時々、こっちがたじろぐような気障な事を云ったりするよ」
「へえ、そうですか」
 均目さんはその云い回しから推察すると、山男なるモノは苦手のようであります。

 頑治さんは三倍目の水割りを自ら作るのでありました。
「そうすると片久那制作部長と山尾主任は気が合う関係と云う事ですかね」
(続
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