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あなたのとりこ 44 [あなたのとりこ 2 創作]

 新宿に出ると寄席の末廣亭近くの雑居ビルの、日比課長と袁満さんが時々通っていると云う洋風居酒屋に四人は入り込むのでありました。先ずは若いウエイターの男に人数を聞かれて、四人掛けのボックス席に案内されるのでありました。その店には袁満さん名義でウイスキーボトルがキープされていて、後はレーズンバターやら野菜スティックやらミックスピザやらのつまみ物を適当に頼んで、四人での二次会が始まるのでありました。
「山尾君は、冗談も洒落も通じない相変わらずの堅物で参るね」
 日比課長が水割りのグラスを傾けながら云うのでありました。
「酒量は結構すごいけど、あれですぐに酔っちゃうからね」
 袁満さんがそう受けるのでありました。日比課長に対してもうすっかりざっくばらんな言葉遣いで、日比課長の方もそれを不愉快そうにもしないところを見ると、これが二人のインフォーマルでの常態なのでありましょう。
「酔うとくどくなるからすぐ判る。本当はあんまり酒に強い方じゃないんだろうな」
 日比課長は一杯目の水割りグラスを口を突き出しながら最終角度まで傾けるのでありました。「まあ、そう云う袁満君も酒には強い方じゃけどな」
 均目さんが空いた日比課長のグラスを受け取って二杯目を作るのでありました。
「俺は大体が酒は好きな方じゃないもの。付き合い程度には飲むけどさ」
「饅頭とかチョコレートの口だな。ああ、それと女」
 日比課長がからかうのでありました。
「女ったって、そんなにモテないもの俺は」
「知ってるよ。でもこよなく好きではあると」
 袁満さんはそう云われても苦笑っても否定はしないのでありました。
「女好きなら日比さんの方が俺よりすごいじゃない。モテないのは同じだけどさ」
「いや、俺はそこそこモテるよ」
「金を遣ってモテるのは本当にモテると云うのとは違うし」
「袁満君はケチで金も遣わないから尚更モテないんだぞ」
「大きなお世話だよ。金使ってまでスケベ親父の評判は取りたくないもの」
 袁満さんはここは少し熱り立つのでありました。そう云うところを見ると、袁満さんは本当にケチなのかも知れないと頑治さんは冗談半分ながらに思うのでありました。
「ところで山尾さんが近々結婚する、と云うのは知ってますか?」
 均目さんが話頭を曲げるのでありました。
「いや、それは初耳だな」
 袁満さんが大袈裟に身を乗り出すのでありました。
「良くは知らないけど、何かそんな話しを甲斐さんから聞いた事があるかな」
 日比課長はそう云いながら、まるでつり合いを取るために袁満さんが身を乗り出した分を差し引くように椅子の背凭れに身を引くのでありました。「その相手の女と云うのは、名前とかどんな人なのかとか、均目君は知っているのかい?」
「いや、良くは知りませんが、何でも山登りのクラブで知り合った人だとか」
(続)
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