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お前の番だ! 527 [お前の番だ! 18 創作]

 万太郎が冷ややかに云うと威治前宗家は一挙に気色ばむのでありました。しかしここで嬲られたと取って怒っては、ひょっとしたら万太郎の思う壺かも知れないと思い直したのか、徐に眉間の皺を緩めて余裕の表情で一つ鼻で笑って見せるのでありました。
「そんな堅苦しい事を云わないで、大目に見る度量はないのか?」
「ありません。手前勝手な云い分は止してください」
 万太郎は抑揚を抑えて不機嫌に云い放つのでありました。
「総士先生が御冠なら、ここは一つお前が執り成してくれてもよかろう?」
「僕にはそんな真似をする義理はありません」
「この道の先輩の俺が頼むんだぞ」
「不謹慎な先輩の無道をお諌めするのも後輩の務めかと心得ます」
「けっ、何を云うか」
 万太郎の取りつく島もない冷眼に威治前宗家は舌打ちで応えるのでありました。「おい折野、お前何時からそんなに偉くなったんだ?」
「何時からと云われても困りますが、・・・」
 万太郎は首を傾げて頭を掻いて見せるのでありました。「まあ、若先生が道分先生のご遺志をないがしろにして、前の興堂流の宗家に収まられた辺りからでしょうかねえ」
 万太郎は至極穏やかに無表情でそんな事を云うのでありましたが、この万太郎の本気とも、からかいとも冗談とも挑発ともつかぬ受け応えに、威治前宗家は少し戸惑いを見せるのでありました。完全に自分を馬鹿にして嘗めてかかっているようでもあるし、生来の愚鈍から、ひょっとしたら案外素直にこちらの問いに応えているようでもあるし。・・・
 万太郎はそんな威治宗家の微妙なまごつきを感知して、これは思いの外、威治前宗家なんという人は根っからの悪人ではないのだろうとも思うのでありました。まあしかしそれはそうとしても、扱い難い、判らず屋の、意地っ張りの見栄っ張りではありますが。
「私共が決して常勝流を蔑ろにするからではなく、寧ろ大いなる敬意と有難く思う心根から、敢えてその名を会派名につけさせて貰ったと云うのは、神かけて本当の気持ちなのです。その点が、どうしても折野先生にはご理解していただけませんかねえ」
 洞甲斐氏が懇願口調で横から口を挟むのでありました。
「理解致しません」
 万太郎はこちらの方には強い眼光を注ぐのでありました。「本気で、常勝流、の名を大事にお考えなら、いとも軽々しく無神経に無断使用等される筈がありませんから」
「単なる手続き上のミスとお察しください。無礼だった点は幾重にもお詫びします」
「致命的な手続き上のミスです」
 あくまで万太郎は洞甲斐氏に対してはつれないないのでありました。
「いやいや、そんなに怖い顔をされないで」
 洞甲斐氏は万太郎の鮸膠もない態度にたじろぐのでありました。
「常勝流総本部に対する手続きを如何にも軽く考えていらしたと云うのであれば、それだけで充分、お言葉とは裏腹に、常勝流、と云う名称を軽んじておられた左証です」
(続)
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