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お前の番だ! 526 [お前の番だ! 18 創作]

 この内二人は洞甲斐氏と同世代と云った年格好で、体格なんぞも洞甲斐氏と同じ中肉中背と云う風で、一人は地味な普段着姿と云ったところでありましたが、もう一人は黒シャツに白いダブルの背広を着ているのでありました。まるで典型的なその筋の者、と云った辺りを強調するようなファッションでありますが、こんな塵埃にまみれた道場では折角の衣装が台なしになるであろうにと、万太郎は要らぬ心配等をするのでありました。
 もう一人の男はずんぐりむっくりと云った体躯をしていて、夏でもないのに着古した白のTシャツにバーミューダパンツと云う格好で、かなりの汗かきらしく、片手に持ったタオルで頻りに額や首筋を拭っているのでありました。この男と茶を持ってきた男が、件の洞甲斐氏の親戚で、プロレスと相撲を仕くじった兄弟でありましょうか。
 花司馬教士の言に依れば、この二人はもう洞甲斐氏の下を離れた筈だと云う事でありましたが、ここにこうして現れたと云うのはどう云った経緯でありましょうや。その後舞い戻って来て、洞甲斐氏に再び師事しているのでありましょうか。
 それとも万太郎が来ると云うので、万が一の場合を心慮して、洞甲斐氏が威嚇の意味も兼ねて本日急遽呼んだのでありましょうか。若しそんな了見であるのなら、いやはや何ともご念の入った、無用な先読みも行き届いた持て成しであろうと云うものでありますか。
 しかし洞甲斐氏が万太郎をたじろがせようと図ったのなら、このタイミングで四人を様子ぶって登場させるのは果たして効果的と云えるのかしらと、万太郎はふと疑問に思うのでありました。まあ、深読みしても始まらない洞甲斐氏の事でありますから、そんな効果の絶大なんぞと云う点は端から考慮してはいなくて、お前等も話しが始まったら茶を持って出て来いと、単にその程度に指示していただけなのかも知れません。
 とまれ、茶を持ってきたノッポとその後に連なり現れた三人は、万太郎と一定の距離を取って後方を囲って逃げ道を遮断するような陣形に、ノッポと普段着とその筋は胡坐にずんぐりむっくりは腹が邪魔なのか片足を投げ出した格好で夫々座るのでありました。後方の座った四人の居住まいの悪そうな風情は、万太郎にも気配で伝わるのでありました。
「ウチの幹部二人と、この世界では名前の通った折野先生がお見えになると云うので、是非そのご尊顔を拝したいとやって来た私の甥っ子の二人です」
 洞甲斐氏が紹介するのでありました。万太郎は後ろをふり返って四人に目礼を送るのでありましたが、幹部と紹介された二人はそれに応えて僅かに頭を前に倒すのでありましたが、甥っ子二人の方は万太郎のご尊顔を拝しに来たにしては全く無愛想に、寧ろ胡散臭いものでも見るような目つきでお辞儀もなく万太郎を見据えているのみでありました。

 万太郎は威治前宗家の方に視線を戻して、話しを続けるのでありました。
「商標権、とか云う話しの前に、武道家としての道義とか筋道の問題が先ずあります」
「総士先生に断りを入れなかったのが怪しからん、と云うわけか?」
「そうです」
「あらかじめ話しをしたら、許可したか?」
「勿論、即答でお断りしていました」
(続)
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