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お前の番だ! 514 [お前の番だ! 18 創作]

「愈々、そう云う事になったか」
 一応万太郎が報告に及ぶと、是路総士はそう云って嘆息するのでありました。
「くっつくべきお二人がくっついたと云うのではなく、云ってみれば消去法から残ったお二方が仕方なく組んだと云う様相ですから、早晩離反されるのではないでしょうか?」
「まあ、確かにお前の云う通りにはなるだろう」
 是路総士は一つ頷くのでありました。
「元々敬意がお二人の間にあるわけではないし、この際相手を自分の思惑のために利用してやろうと云う魂胆で一緒になられたのでしょうから、結末はもう知れています」
「威治君にはもうそろそろ、そう云うつまらない迂路に足を突っこまないで、道分さんの遺した正道で地道に研鑽して貰いたいと願うのだが、まあ、なかなかなあ。・・・」
 是路総士の嘆息は止まないのでありました。是路総士としては威治前宗家に見栄や体裁や甘い観測等はきっぱり棄てて、一路武道修行に専念して貰いたいのでありましょう。
 しかしその是路総士の願いは、恐らく叶わないであろうと万太郎は思うのでありました。結局のところ見栄や体裁や甘い観測で軽挙妄動する事が、子供の頃から周りにちやほやされ続けて育った威治前宗家の真骨頂でありましょうし、そう云う性分なんと云うものは余程の事がない限り、なかなかに抜けないもののようでありますから。
 まあ、もう充分に余程の事を味わっただろうとも考えられるのでありますが、要するに懲りないと云うのか、未だ足りないようであります。威治前宗家は自分に纏わってあれこれ生起する色んな事象に対する感受性が、決定的に鈍いのでありましょう。
 だから困った事になかなかめげないのでありますが、しかしこれは反面、うまく機能すれば強みにもなり得るとも思えるのであります。まあ、強みにするためには、偏に省察力と分析力をどれだけ有しているかと云うところにかかっているのでありましょうが。
「もし仮に、あくまでも仮にですが、威治先生が心を入れ替えられて地道で殊勝な態度で総本部の一支部を興そうとされるのなら、総士先生はご協力されるのでしょうか?」
 万太郎はそんな質問をしてみるのでありました。
「それは勿論、そう出来る環境が整えばそうするに吝かではない。何と云っても威治君は私の最良の兄弟弟子たる道分さんの一子なのだから」
 そう応える是路総士の言葉には、実のところ諦めの色あいが濃く滲んでいるように万太郎には聞こえるのでありました。万太郎も陰鬱な気分になるのでありましたが、是路総士のそんな心根を踏まえておくのは、何につけても重要な事だと思うのでありました。
 そうこうしている内に威治前宗家と洞甲斐氏の、慎に困った行状の知らせが万太郎の耳に届くのでありました。これも八王子支部の世話役から齎されたのでありましたが、世話役は憤怒に耐えないと云った語調でその件を電話報告するのでありました。
 威治前宗家と洞甲斐氏が新会派を結成したと云うのは観測の通りでありましたが、あろう事か洞甲斐氏の道場の新しい看板に、常勝流新興堂派、と堂々と大書してあると云うのであります。新興堂派、は別としても、常勝流、の前書きは甚だいただけないと云うもので、是路総士にその名称を使用する許可は取っていないのであります。
(続)
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