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お前の番だ! 497 [お前の番だ! 17 創作]

 三人は来間を先導として廊下を食堂の方に歩むのでありました。万太郎はこの場ではそう云うのでありましたが、しかし後日是路総士を始め鳥枝範士も寄敷範士も、それに花司馬教士にあゆみに万太郎も加えて、その件で話しあいの場が持たれるのでありました。

 鳥枝範士は猪口をグイと空けるのでありました。空かさず来間は徳利を取って鳥枝範士の空いた猪口に日本酒を満たすのでありました。
「何でも使いこみがバレて、会長に引導を渡されたようですな。何ともさもしい辞め方ですが、まあ、威治らしいと云えば如何にも威治らしいとも云えましょうかなあ」
 鳥枝範士は是路総士に向かってそう云ってまた猪口を空けるのでありました。興堂派の威治前宗家が辞職した経緯は、先に来間に聞いた話しと大方一致するのでありました。
「彼奴は、興堂派は自分の専有物だと端から思っていたようだから、興堂派の金と自分の金との区別が全くつかずに有耶無耶だったのだろうなあ。呆れたものだが」
 寄敷範士も同じく、花司馬教士が差した自分の酒を飲み干すのでありました。
「だから、その場に同席したワシの知りあいの理事に依れば、どうして会長がそんな無体な説教をするのか、と云った顔をして威治は会長の怒声を聞いていたそうだ」
「万事に鈍い、と云えばそれまでだが」
 寄敷範士は花司馬教士から徳利を受け取って、それを花司馬教士が恭しそうに手にしている猪口に差し返すのでありました。
「開き直りではなく本気で、どうして自分が非難されなければならないのか、と云ったその場での威治の無愛想面が目に見えるようですよ」
 花司馬教士がそう云って皮肉な笑いを口の端に浮かべるのでありました。
「威治君はその金を何に使ったのかな?」
 是路総士が鳥枝範士に訊くのでありました。
「銀座のバーのホステスに入れ上げていて、その女の云いなりに、ブランド品の服やバッグや貴金属の代金を貢いでいたと云う事です。まあ、そのバーの飲み食いの代金も、当然興堂派の金から出していたのでしょう。それに飽く事なき女の要求に応えるために、株で一儲けしようと企んで、素人のお定まり通り大損したと云うのもあったようですな」
「いやはや、何とも下衆な」
 寄敷範士が小さく吐き捨てるのでありました。
「如何程使いこんだのかな?」
 是路総士が万太郎の酌を受けながら訊くのでありました。
「二千万余りだそうです」
 鳥枝範士がそう云って渋い顔をして見せるのでありました。威治前宗家が着服した金額に関しても来間に聞いた通りでありました。
「どうしてバレたのかな。外部の監査でも入ったのかい?」
 寄敷範士が鳥枝範士の猪口に酒を注ぎながら訊くのでありました。
「腰巾着の筈の事務長が会長にチクッたらしい」
(続)
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