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お前の番だ! 496 [お前の番だ! 17 創作]

「そうすると興堂流の、運営面は理事会の意向もあるだろうから別としても、技術面に関しては田依里さんがトップに立つと云う事になるのだろうなあ」
「そうですね。実際のところ以前からそんな風ではありましたが、それがこれからは名実伴にそうなると云う按配でしょうね」
「そうね。前から実技では田依里さんが率いているようなものだったから、今の興堂流の技法や稽古の仕方に照らせば、その方がスッキリ実態にあうような気もするわね」
 あゆみがあれこれ考える風の表情をして、呟くように云うのでありました。
「そうですね。既に常勝流興堂派の色あいはすっかり薄まって仕舞っていて、今では技も武道的な考え方も別物の、田依里流、と云う風に云えますからね」
 万太郎が納得気に頷くのでありました。
「それにしても、門下生がまたまた減るんじゃないかしら?」
 あゆみは無関係な他派の事ながらも運営面での危惧を表明するのでありました。
「しかし前の威治宗家の場合と違って、今度は組織がより健全に変わると云う事になりますから、門下生の目には立て直しと映るのではないでしょうかね?」
 万太郎がまた憶測を述べるのでありました。
「確かに門下生達の動揺する気配は余り見られないようです。それよりは寧ろ、大方のところは歓迎するような雰囲気のようですね。要するに田依里さんの人望の方が宗家より数段優っているのですから、門下生にとっては返って好都合な事となるのでしょうし」
 事情通の来間が興堂派内部の空気なぞを紹介するのでありました。
「威治さんは結局、何処ででも疎んじられる役回りばかりね」
 あゆみがふと、溜息交じりにそんな事を呟くのでありました。そう呟くあゆみ自身も、嘗ては威治宗家、いやもう、前宗家、と云うべきでありましょうが、その人を、見事に疎んじた内の一人なのではありますけれど。・・・
 三人がそんな話しをしているところに、準内弟子の片倉が昼食はどうするのかと師範控えの間に訊きに来るのでありました。存外万太郎とあゆみと来間の話しが長引いているようなので、待ち草臥れて様子伺いにやって来たのでありましょう。
 その日、総本部道場に来ている準内弟子は片倉と高尾とジョージの三人でありました。万太郎は障子戸越しにすぐに食堂に戻ると云って片倉を下がらせるのでありました。
「威治前宗家のこの件は、総士先生はもうご存知なのだろうか?」
 話しをここで一段落として、立ち上がりながら万太郎が来間に訊くのでありました。
「鳥枝先生辺りから、既にお聞きになっているのではないでしょうか」
 一緒に腰を上げながら来間が応えるのでありました。
「ああそうか。鳥枝先生は向こうの理事に知りあいがおありだからな」
「そうね。でも今夜にでもお父さんにはあたしからちらと、一応伝えるわ」
 あゆみも立ち上がるのでありました。
「そうですね。まあ、気にはなりますが他派の動向ですから、総本部運営者全員で以って、その件で態々打ちあわせの場を設ける必要はないのでしょうし」
(続)
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