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お前の番だ! 495 [お前の番だ! 17 創作]

「着服した金額は一体幾らなのかしら?」
 あゆみが首を傾げながら来間に訊くのでありました。
「詳しくは判りませんが数千万円単位と云う話しです」
 相変わらず来間はヒソヒソ声で応えるのでありました。
「それはかなりな額じゃない。威治さんに弁済する能力があるのかしら?」
「道分先生はなかなかの資産家でいらしたから、遺産の事を考えれば、そのくらいなら多分大丈夫なのではないでしょうか。まあ、僕には確かなところは判りませんが」
 万太郎が思いつきの推測を述べるのでありました。
「威治さん一人がその資産の全額を相続したのなら大丈夫でしょうけど、あちらにはお兄さんがいらっしゃるでしょう?」
「威治宗家だけの力じゃあ無理だとしても、お兄さんは興堂流の理事でもありますから、亡くなった道分先生のお名前を汚さないためなら、その辺は協力されるのじゃないですか、いたく渋いお顔はされるとしても。何はさて置き弟御の不始末なのですから」
「その辺が大丈夫なら、隠密裏に事を片づける事は出来そうだけどね」
 あゆみが万太郎に頷いて見せるのでありました。
「威治宗家は解任された後、どうするのだろう?」
 万太郎は来間の方に目を遣るのでありました。
「さあ、それは判りません。ある日唐突に、威治宗家が興堂流総帥を辞した旨の簡単な報告文が、道場の掲示板に張り出されていたと云うのですから」
「宗家と云う立場は、その儘なのかな?」
「いや、宗家も辞める、或いは辞めさせられるんじゃないかと云う話しです」
「それはそうだろうな。そんな人が宗家じゃあ、興堂流は立つ瀬もなかろうし」
 万太郎は頷くのでありました。
「宗家は、お兄さんが継承されるのじゃないかと云う噂です」
「それはその方が無難な線か」
「でも、お兄さんは学校の先生をしていらして、武道には全く無関係な方でしょう?」
 あゆみがまた首を傾げるのでありました。
「まあしかし、名目だけとは云え興堂流の理事の一人でもいらっしゃいますし、血統を絶やさないと云う一点で、実技を全く修めた事のない血縁者が道統を継ぐ、なんという例は世間にはざらに、とは云わないまでも、間々にある話しではないでしょうかね」
「それはそうだけど」
 万太郎の観測に納得の斤量が少ないのか、あゆみは今度は頷かないのでありました。
「何れにしても、威治宗家は向後、興堂流とは全くの無関係な人となるのかな?」
 万太郎はまた来間の方に視線を移すのでありました。
「恐らくそうなるでしょう。そんな背信行為をした人と関わりを持ち続けるのは、興堂流の方が真っ平ご免被りたいところでしょうから」
 来間は興堂流に成り変わってげんなり顔をして見せるのでありました。
(続)
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