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お前の番だ! 486 [お前の番だ! 17 創作]

 こうなると威治宗家は向後、今にも況して何もしなくなる、或いは何も出来なくなると云う事になりましょうか。名前ばかりの宗家、と成り果てるわけであります。
「宗家の指導が敬遠されて全く人気がない一方で、その代わりに田依里さんへの指導依頼は殺到していると云う事です。支部長クラスの人望も、門下生の心服もすっかり田依里さんに集まっていて、今では田依里さんが実質上の興堂流の総帥のような観だそうです」
「まあ、さもありなん、と云うところではあるか」
 万太郎は敷き延べた布団の上に座って頷くのでありました。
「それで今度は、宗家と田依里さんの間で確執が生じている模様です」
 来間も自分の布団の上に座りこむのでありました。
「そりゃあ宗家としては、そんな状況は面白くないだろうからなあ」
「宗家は田依里さんに、この儘では自分の地位が侵されて仕舞うのではないかと云う恐怖があって、毎日が心穏やかではいられないようですね」
「しかし今、田依里さんが辞めるような事があったら、興堂派はすっかり立ち行かなくなって仕舞うだろう。その辺は宗家も判ってはいるだろうに」
「でも嘗ての花司馬先生の事例もありますように、あちらの宗家は自分の宗家としての体裁や面目が侵害されたら、或いは侵害される恐れがあるなら、後先の情勢も何も考えずに情動的に行動する危険があります。目の上のたん瘤が何より嫌いな人ですから」
「確かに有能な人を上手く使えない、人事の下手な組織の長ではあるな」
「それも自分が誰よりも能力が上であるから竟々人あしらいが下手だと云うのではなく、妬み嫉みや保身と云うところで配下を粗略に扱うのですから、レベル以下ですよ」
 来間はなかなか辛辣なのでありました。
「田依里さんもなかなか出来た人であるからこそ、返って威治宗家相手じゃあ、色々と気苦労が絶えない、と云ったところかな」
「そうですね。田依里さんが気の毒になって来ますよ」
 来間はため息をついて見せるのでありました。
「ところで来間、・・・」
 万太郎は語調を少し変えるのでありました。「お前、興堂派の内部事情にあれこれ妙に詳しいが、その情報源と云うのは何なんだ?」
「いえまあ、色々と。・・・」
 来間は有耶無耶に口を濁すのでありました。
「向こうにお前のスパイでも送りこんでいるのか?」
「いえ、そんな事はしていませんが、ちょっとした知りあいはいます。情報を得ようと抜かりなくアンテナを張っていれば、画策しなくてもそこそこ集まってきますよ」
「ああそうかい」
 万太郎は少し口を尖らせて見せるのでありました。「情報を集めるのは良いが、向こうにつまらん勘繰りをされたり、あらぬ誤解を招くような真似だけはするなよ」
「押忍。十分気をつけて、抜かりなくやります」
(続)
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