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お前の番だ! 484 [お前の番だ! 17 創作]

「それは僕も、八王子に行った時に堂下辺りからちょろっと、威治宗家の最近の動静等聞く事があります。まあ、堂下もあんまり好意的な事は云いません」
「田依里は何もお前に云わんのか?」
「そうですね。田依里さんは内輪の事情は決して外にはお話しなさいませんし」
「ああそうか。しかし堂下はお前に色々漏らすわけだな?」
「ええまあ。しかし堂下も、何もかもと云うわけではありません」
 万太郎は堂下が田依里筆頭師範に比べて、思慮の浅い迂闊な男と鳥枝範士に見做されるのを避けようと気遣ってそう返すのでありました。
「何でも、威治は最近、横着して道場に顔も見せんと云う事じゃないか?」
「いや、道場には毎日いらしているようです。金銭の出し入れを管理されているのですから、いらっしゃらないと道場の日常業務が滞るでしょうから」
「じゃあ、顔は出しているんだな?」
「堂下からはそのように聞いております」
「名前は忘れたが、何某とか云う自分が何処からか連れてきた番頭みたいなヤツに道場での出納はすっかり任せて、その番頭が昼頃、威治の家に立ち寄って金庫と帳簿を預かって行って、夜にまた来て威治にそれを返却するのだとワシは噂を聞いたが?」
「いや、そう云う事はないと思います」
 鳥枝範士が云うこの、番頭、とは、興堂流の事務局長の事でありましょう。
「道場に来ないのは何でも何処かのクラブのホステスに入れ上げていて、夜な々々その店に通っているからだとも聞いたのだが?」
「いや、そのような話しは、僕は知りません」
「堂下がそんな事を仄めかせてはいなかったか?」
「いや、特段そのような事は」
 それに関しては、堂下からは本当に聞き及んではいないのでありましたが。「ただ、道場にはいらしても、あまり稽古には顔出しされないようですが」
「稽古には出ないのか?」
「田依里さんが殆ど稽古を仕切っていらっしゃるようですから」
「成程。威治の出る幕はないか」
 鳥枝範士はそう云って納得気に頷くのでありました。
「それじゃあ威治は道場で、金庫の見張り以外に一体何をしているのだ?」
「パソコンゲームだそうです」
「パソコンゲーム?」
 鳥枝範士は剣幕を添えた目を剥くのでありました。
「堂下からはそんな事を聞いております」
「何だ幼稚な。女に入れ上げるよりもそれはもっと体裁が悪い」
 万太郎はパソコンゲームと女性への思慕の、体裁上の優劣について少し考えてみるのでありました。しかしどちらが優でどちらが劣か何とも良く判らないのでありました。
(続)
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