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お前の番だ! 474 [お前の番だ! 16 創作]

「宗家先生の再三の指令を全くお聞きにならないもので。・・・」
 堂下は眉宇を曇らせながら云うのでありました。
「宗家の指令とは一体何だ?」
「新しく制定した組手の形をちゃんと指導しろとか、年に二回ある選手権大会に八王子の門下生を必ず出場させろとか、本部に納める登録料を滞納するなとか、まあ、色々と」
「ふうん」
「他にもあれこれ除名理由はあるのですが、まあ、それは内部の事なので。・・・」
 堂下はそう云ってその後を曖昧に濁すのでありました。
「しかし除名とは、なかなか思い切った処置だな」
「もっと穏当な取り計らいをと云う意見もあったのですが、宗家先生のお怒りが相当なもので、結局除名処分と云う仕儀になったのです」
「そう云う処置について門外の自分が何か云うのは控えるけれど、・・・」
 万太郎はそう云って顎を撫でるのでありました。「しかし驚いたな」
「洞甲斐先生のされている活動と、それに宗家先生のご気性から、お察しください」
 堂下は興醒め気に眉を少し寄せて見せるのでありました。
「ところで、組手の形を新しく制定したのか?」
「ええ。今の本部筆頭師範が組形稽古を取り入れなければ技が上達しないとおっしゃって、宗家の許可を得て殆ど総ての形、八本ですが、それを考案されたのです」
「ほう。失礼な云い方だが、宗家もなかなか上達論が判っているじゃないか」
「いや、宗家は形の制定には何も関与されていません。総て筆頭師範の仕事です」
「筆頭師範と云うのは、・・・?」
「前に実戦派の空手をされていた人で、田依里成介と云う人です」
 堂下は筆頭師範の名前を云って俄かに、自分がここに現れた理由を思い出したと云う顔をするのでありました。「その田依里が今日こちらで指導しておりまして、若し可能ならば今後ともご交誼をいただきたいので、折野先生にご挨拶をしたいと申しております」
「それはご丁寧な事だが」
 万太郎がそう云った辺りで門下生の一人が近寄って来て、そろそろ次の技の指導をお願いしたいと、お辞儀しながら申し出るのでありました。万太郎は、ああうっかりしていた、と云った顔をして頷いてから堂下の方にもう一度顔を向けるのでありました。
「それじゃあ稽古が終わってから、若し良ければ体育館の一階ロビー辺りでお逢い願えたらと、その田依里先生にお伝えしてくれないか?」
「判りました。そう伝えます」
 堂下はそう云って万太郎に一礼してから武道場を離れるのでありました。
 稽古が終了して着替えも済んで、万太郎と門下生達が体育館一階のロビーに行くと、堂下とその横に、それが田依里成介筆頭師範であろう二人が立っているのでありました。田依里筆頭師範はなかなか立派な体躯をした花司馬教士と同年配と思しき人で、堂下とお揃いの、胸元に興堂流と名入れした紺色のスポーツウェアを着ているのでありました。
(続)
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