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お前の番だ! 464 [お前の番だ! 16 創作]

 万太郎はそう云ってあゆみに笑いかけるのでありました。「で、その洞甲斐先生の移籍願いの件は如何取り計らいましょう?」
 万太郎は是路総士の方に顔を向けるのでありました。
「折野はどうする心算だ?」
「移籍して貰ってもあんまり益もなさそうですし、返って総本部の見識が疑われて仕舞うのも叶いませんから、折角のお話しではありますがきっぱりお断りしようと思います」
「成程。その折野の考えに、私は針の先ほどの異を差し挟む心算はないよ」
 是路総士は静かに頷くのでありました。「あゆみはどうだ?」
「あたしも今回のお話しはお断りした方が良いと思います」
 あゆみがそう云って伏し目をするのは、是路総士への目礼でありましょう。
「花司馬はどうか?」
「自分は道場長先生と道場長代理先生のご判断に異存を述べる立場にありません。まあしかし、あの馬鹿野郎の移籍を許す等と折野先生が若しも云われたなら、ここはあの馬鹿野郎の本性を少しは知っている者として、敢えて遠慮なくお諫めする心算でいましたが」
「相判った。全会一致だ」
 是路総士はそう云って掌をポンと一つ打ち鳴らすのでありました。
「鳥枝先生と寄敷先生のご意見をお伺いしなくともよろしいでしょうか?」
「まあ、態々聞くまでもないだろうよ」
 是路総士は万太郎に笑って見せるのでありました。
「ではそれを、僕から明日にでも洞甲斐先生に伝達します」
「万ちゃんは明日、八王子に指導に行くんだったっけ?」
 あゆみが訊くのでありました。
「いえ、寄敷先生が行かれる予定ですが、代わって貰おうと思います」
「代わって貰うのは良いとして、でも、こちらの見解を正式に洞甲斐先生に伝達するのは、お父さんじゃなくて万ちゃんで良いのかしら?」
「僕に話しがあったのですから、敢えて総士先生にご出馬を願う迄もないでしょう」
「そうですね。あの馬鹿野郎はあんなヤツですから、総士先生が自らお出ましになるとそれをこちらの敬意の表れだとか、満更自分と繋がりを持ちたくない事もないのかも知れない等と、手前勝手な誤解をしかねません。間違ったサインを送らないためにも、ここは直接話しのあった折野先生から、つれなく因果を含める方が良策かと自分も思います」
 花司馬教士も万太郎の考えに同調するのでありました。「若し何でしたら、自分が同行しても構いませんよ。自分としてもこの際、少し云ってやりたい事もありますから」
「いやそれでは返って事が荒立つ事になりますから、ここはサラッと、事務的に処理する方が良いかと思います。それに花司馬先生は、明日は総本部の稽古を総て指導していただく事になっていますので、予定通りそちらをよろしくお願いします」
「ああそうですか。折野先生のご命とあらば、そういたします」
 花司馬教士は万太郎にお辞儀するのでありました。
(続)
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