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お前の番だ! 458 [お前の番だ! 16 創作]

 あゆみが好都合にも話題を変えるのでありましたが、万太郎は渡りに舟と、そちらの舟縁にさっさと飛び移るのでありました。「二人共、そろそろ着替えて出発しようかと云っていたところに、丁度あゆみさんがいらしたのです」
「ああそう。助手は誰を連れて行くんだっけ?」
「花司馬先生には狭間が、僕には高尾がつく事になっています。こちらには来間と、それから今日は珍しくジョージが残る事になります」
「ジョージは、学校の方は良いの?」
「今日は英会話講師の仕事は休みだそうで、一般門下生稽古に出ます」
 そんな話しをしていると来間が食堂に現れるのでありました。
「押忍。狭間と高尾はもう何時でも出発出来ます」
 来間は万太郎と花司馬教士の顔を交互に見ながら報告するのでありました。
「判った。我々もすぐに着替える」
 万太郎が頷くのでありました。
「押忍。それでは受付部屋に待機させておきます」
 来間が去るのを追うように、万太郎と花司馬教士は着替えのために内弟子部屋に向かうべく、椅子から腰を上げてあゆみにお辞儀するのでありました。
「押忍。ではこれから出稽古に行って参ります」
 万太郎と花司馬教士は声を揃えて道場長たるあゆみに申告するのでありました。
「押忍。ご苦労様です。よろしくお願いします」
 あゆみも立ち上がって二人にお辞儀を返すのでありました。
 着替えを済ませた万太郎と花司馬教士は、師範控えの間に行ってそこに居る是路総士に出稽古出発の挨拶をするのでありました。その後二人は高尾と狭間を引き連れて、来間とジョージに見送られて、連れ立って仙川駅まで歩くのでありました。
「花司馬先生は、来週は東北方面の出張指導でしたよね?」
 万太郎が隣を歩く花司馬教士に話しかけるのでありました。
「はい。一週間程の予定で行って来ます」
「僕は明後日から関西と山陰方面に行きます。と云っても大阪や京都や神戸ではなく、米原から敦賀を回って、後は福知山とそれから鳥取と云うルートですが」
「ああそうですか。なかなか一緒にじっくり稽古する時間が持てませんね」
「興堂派があのようになってから、総本部の所帯が急に膨らんで、地方出張指導が矢鱈と増えましたから致し方ありませんが、僕が神保町の興堂派道場に出稽古に行っていた頃のように、二人でまたみっちり稽古がしたいものですねえ」
 万太郎が往時を懐かしむような顔をするのでありました。
「ま、こう云った連中の心境が進んで、出稽古も任せられるようになったら、その暁には二人でみっちりと稽古をしましょう」
 花司馬教士は後ろを歩く狭間と高尾をふり返りながら云うのでありました。後ろの二人は花司馬教士の不意の視線にどぎまぎして「押忍」とのみ応えるのでありました。
(続)
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