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お前の番だ! 451 [お前の番だ! 16 創作]

 あゆみは万太郎のその表情を見て、今度は吹くだけでは収まらずに身を捩りながら大笑するのでありました。結構受けたかなと、万太郎の方はあゆみを大笑させた事に大いに満足を覚えながら、殆ど冷めて仕舞ったコーヒーを口に運ぶのでありました。
「洗面器に何度も顔をつけていたためか、その日以来ニキビも消えて、僕の顔は妙にスベスベになりましたが、まあ、それがこの騒動の意図しない収穫でしたかねえ」
 万太郎としては、これは冗談の止めの一発の心算でありました。しかし意図した程あゆみが大笑に輪をかける事がなかったのは、些か物足りない事ではありましたか。
「洗面器がどうした?」
 是路総士が不意に台所に入って来るのでありました。万太郎はすぐに立って是路総士に固いお辞儀を送るのでありました。
「押忍。いや別に何でもありません」
 万太郎は至極真面目くさった顔で返すのでありました。
「万ちゃんと、熊本のご両親とお兄様にお会いした時の事を話していたのよ」
 そう云うあゆみの横に是路総士も腰を下ろすのでありました。
「ああ、ご両親は態々人吉から出てこられて、お兄様共々私等の泊まっているホテルまでお越しになって、くれぐれもお前の事をよろしくとおっしゃっておられたぞ」
 是路総士は万太郎にそう云って笑顔を向けるのでありました。
「押忍。態々そのために時間をつくっていただいて有難うございました」
「いや何、とても楽しい時間だったよ」
「お父さん、お茶にする、それともコーヒーにする?」
 あゆみが立ち上がりながら是路総士に訊くのでありました。
「じゃあ、茶を貰おうかな」
 その言葉を聞いてからあゆみは流し台の方に向かうのでありました。
「何やら、両親や兄が僕の熊本時代のつまらない話しをあれこれお聞かせしたようで」
 万太郎はそう云って、何となく頭を下げるのでありました。
「ああ、色々聞かせて貰った。・・・ああ、お兄様から聞いたお前の自殺未遂の件を、今あゆみと話していて、それで洗面器が出.てきたわけだな?」
「押忍。ご明察の通りです」
「いや、あれには笑ったぞ。お前は、高校時代は相当味わい深いヤツだったようだな」
「お恥ずかしい次第です」
 万太郎は苦笑しながら頭を掻くのでありました。
「見ていると今でもその頃の片鱗が、多少残っているような、残っていないような」
「いやあ、どうも恐れ入ります」
 万太郎の体裁悪がる様子を是路総士は愉快そうに笑うのでありました。
「あたしもお父さんの意見に一票」
 あゆみが湯気立つ湯呑を是路総士の前に置いて、また元の席に座るのでありました。
「それから、ご両親に、お前に良い嫁さんを見つけてやってくれと頼まれたぞ」
(続)
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