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お前の番だ! 437 [お前の番だ! 15 創作]

 こうなると万太郎としては、狸と狐と貉と人間の問題も、ここで出現したのではないような気がしてくるのでありました。どこか別の場面でそんな事を考えたのが、ここに一緒くたに間違った記憶として書きこまれたのかも知れません。
 とすると、これは何時どんな局面において考えた事柄だったでありましょうか。あゆみに関連したところの問題であったのは間違いないでありましょうが。
「万ちゃん、ほら、また黙って」
 あゆみが万太郎の鼻の頭を指で軽く弾くのでありました。
「ああ、いや、どうも。・・・」
「狸と狐と、ええと貉と、人間の問題について考えを回らしているの?」
「まあ、そんなような、そんなようでないような。・・・」
「まあいいや」
 あゆみはその事からあっさりと離れるのでありました。「ところで万ちゃんにも訊くけどさ、万ちゃんには意中の人とかはいないの?」
「え、僕ですか?」
 そう聞かれて万太郎は、今あゆみに弾かれたばかりの自分の鼻の頭を、少しばかり目を見開いて自分で指差して見せるのでありました。「僕は、未だ一人前にもなっていないし、意中の人がいてもその人を幸せに出来るような甲斐性もなさそうだし。・・・」
「そんな事もないんじゃない」
 あゆみはそう云って万太郎の方を一直線に見るのでありました。それからすぐに目線を逸らして、万太郎の少し前に歩み出るのでありました。
 公園の中のそぞろ歩きで少し疲れたのか、あゆみは径の傍らに据えてあるベンチに腰かけるのでありました。万太郎も遅れてその隣に座るのでありました。
「万ちゃんは今じゃあ、総本部道場の運営を殆ど任されているじゃない」
「いやいや、僕はあくまでもあゆみさんの助手の心算です」
「実質は、あたしが助手みたいな感じでしょう?」
「いやいや、助手は僕です」
 万太郎はどこまでも遜ろうとするのでありました。
「まあいいや」
 あゆみはここでもあっさりとその点に関する云いあいを終らせるのでありました。「で、万ちゃんは意中の人は、いるのいないの?」
「いない事もないですが。・・・」
 結局そう云う風につめ寄られると、あゆみではないけれどこう云った具合の曖昧な、ちっともきっぱりとしない受け応えをするしかないかと万太郎は思うのでありました。まあ、実はあゆみはそうは云わなかったし、云ったのは鳥枝範士なのでありましたが。
「誰よ、その意中の人って?」
 あゆみは興味津々と云った表情をして少し万太郎ににじり寄るのでありました。あゆみの膝が万太郎の太腿に触れて、秘かに万太郎をたじろがせるのでありました。
(続)
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