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お前の番だ! 414 [お前の番だ! 14 創作]

 鳥枝範士はあくまでもつれないのでありました。「ひょっとして花司馬は、そう云う流言が出る事に対して、お門違いの責任とかを感じているのではないか?」
 そう云われて花司馬教士は俯くのでありました。
「成り行きから、全く責任なしと云うわけにはいかないような気がしております」
「無意味な思い過ごしだ。お前の思いとは関わりなく、威治がお前を追い出すように仕向けたのだし、そんなヤツに愛想尽かししたので、支部が離れていったんだ。元凶は総て威治の不徳にあるのだから、お前が責任を感じる必要は何処にもない」
「しかし自分がもっと色々尽力すれば、興堂派がこんなに衰退して仕舞うのを、幾らかでも防げたかも知れないという、何やら道分先生に対しての慙悸は拭えないでいます」
「お前がどんなに尽力しても、それは結局徒労に終わったろうよ。まあ、威治を興堂派から追い出すと云うくらいの覚悟があったならば、それはまた別の話しになろうが」
「いや、そこまでは。・・・」
 花司馬教士は口籠もるのでありました。それはそうでありましょう。
 花司馬教士は興堂範士の興した興堂派と云う流派から、その血脈を切り捨てるわけにはいかないと考えるでありましょう。そこまで非情にはなれない人なのであります。
「流言は何時かは消える。殊に根も葉もない流言はすぐに姿を消す。その尻馬に乗って騒いだ連中もたちまち、しれっと何もなかったような顔をするようになる」
 鳥枝範士は到って無愛想にそう云って、花司馬教士の気持ちを軽くしてやろうとするのでありました。こちらも、実際は優しい心根の人なのであります。
 さて、新加盟の道場が急増したものだから、総本部の指導陣はかなり忙しくあちらこちらの支部を駆け回らなければならないのでありました。総本部から近い処ならば、向こうから稽古に来る事も可能でありますが、地方となるとおいそれとはそうもいかないので、畢竟、請われる儘総本部指導陣が出張指導に出向く事になるのであります。
 特に当初は指導と免許審査の依頼が引切りなしで、その調整を受け持つ万太郎とあゆみは一苦労するのでありました。しかも一回だけ指導や審査に行けば済むと云うものでもないし、元々出向いていた総本部系の道場への出張指導を等閑にするわけにもいかないので、指導陣の出張ローテーションを組むのは大いに気骨の折れる仕事でありました。
 総本部は単なる営利調整機関ではなく流派の総元締めなのでありますし、武道では技術の統一と免許発行元が単一である事が流派の根幹要件で、そのためには出張指導と免許審査は代行の利かない重要なものであります。特に新たな加盟団体に対しては、そこの指導者をも含めて、新たに総本部の免許を交付しなければならないのでありますから。
 これは花司馬教士も例外ではなく、教士としての技量が十分かどうかの審査はあったのでありました。勿論問題なく、花司馬教士はそれに悠々合格したのでありました。
 旧興堂派は体術では微妙な総本部との違いはあったものの、興堂範士が常勝流の理合いに忠実だったので全く別物という程ではないのでありましたが、剣術に関しては興堂範士が得手ではなかったせいか、その技量に総本部との大きな落差があるのでありました。先ずはここから、技も理も、水準を上げていかなければならないのでありました。
(続)
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