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お前の番だ! 411 [お前の番だ! 14 創作]

「あゆみ先生は前から花司馬先生に、先生をつけて呼ばれていらっしゃいますけど、そう云う呼び方を納得されていますか?」
 来間があゆみの方に深刻顔を向けるのでありました。
「納得しているわけじゃないけど、もう拘らないようにしているの」
「俺は納得する途上にあるかな、云ってみれば」
 万太郎が背凭れから上体を起こしながら来間に云うのでありました。
「しかし、常勝流の大先輩である花司馬先生が僕等をそう呼ぶのは、如何にも不自然で、落ち着きの悪い事態だと自分は思うのです」
 来間は力説するのでありました。「ここは矢張り年季の順を守って、まあ、お二人の事はさて置いて、少なくとも自分の事は呼び捨てにしていただかないと」
「さて置かないで、俺もそっちの方に入れろ」
 万太郎は冗談っぽくそう云って情けなさそうな顔をして見せるのでありました。
「折野先生、自分は本気で訴えているのですよ」
 来間は万太郎の不謹慎な態度に大袈裟に不快感を示すのでありました。
「注連ちゃんもあたしを、あゆみさん、と呼んでいたのに、いつの間にか、あゆみ先生、なんって最近は呼んでいるじゃない」
「それは道場長補佐の折野先生を先生と呼んで、道場長のあゆみ先生を先生と呼ばないのはおかしいと思ったからです」
「ああ成程。それなりの理由はあるわけね。でも自然か不自然かは別にして、花司馬先生にもそれなりの理由があって、注連ちゃんを先生と呼んでいるんじゃないの」
「この場合、自然である事が大事なのです」
「それなら来間、俺に頼まないで自分で呼び捨てにしてくれと花司馬先生を説得しろ。まあ、序に俺も呼び捨てにしてくれと云い添えてくれたら助かる」
 万太郎がそう云うと、来間は急に及び腰になるのでありました。
「え、自分が云うのですか?」
「序の序に、あたしの呼び捨ての件もよろしく云ってくれる?」
 あゆみが万太郎に同調するのでありました。
「いやあ、僕が云うのは、後輩としての遠慮がなさ過ぎると云うか、何と云うか。・・・」
「花司馬先生にそう云うのは、なかなか億劫でしょう?」
「億劫でしんどそうです」
 来間はあゆみから目を逸らすのでありました。
「だからこちらで拘らないようにするのが得策なのよ。ひょっとしたらその内、状況が変われば花司馬先生の考えも変わるかも知れないから、それを期待して」
「いっその事、指導部全員で、お互いに相手を先生と呼びあうと云うのはどうですか?」
 万太郎はあくまで茶化す態度であります。
「成程、それも一策ではあるわね」
 今度はあゆみが万太郎の茶々に同調するのでありました。
(続)
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