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お前の番だ! 410 [お前の番だ! 14 創作]

「この場合はそうはいきません。総本部の温情に依り末席に連なる事を許された者が、そこに古くから居た方々に不遜であったら、この花司馬の面目が全く立ちません」
 花司馬教士は目を剥いて眉根を寄せて万太郎にそう返すのでありましたが、その大袈裟な物腰に万太郎は心中やれやれと頭を抱えるのでありました。前にあゆみも、先生、は止めてくれと申し入れて、頑なに拒まれたと云う経緯を聞いていたのでありますが、成程この花司馬教士の了見を変えさせるには相当の粘り強い交渉が要るようであります。
 花司馬教士はあゆみや万太郎ばかりではなく、来間に対しても先生と云う尊称をつけるのでありました。これには来間が魂消てオロオロするのでありました。
 思い余ったか、来間はある時万太郎にこの窮状を切々と訴えるのでありました。
「あのう、折野先生、ちょっと良いですか?」
 来間は母屋の食堂で椅子に腰かけている万太郎に背後から声をかけるのでありました。
「おう何だ、来間先生?」
 ふり返った万太郎のその受け応えに、来間は露骨に嫌な顔をするのでありました。
「折野先生まで、花司馬先生の真似は止めてくださいよ」
 来間はそう云いながら万太郎の向いに腰を下ろすのでありました。
「何だ、どうかしたか?」
「実は、その花司馬先生の事なのですが」
 来間はそう云ってその先を喋る事を少し逡巡するのでありました。「別に花司馬先生がどうこうと云うわけじゃないんですが、自分まで先生をつけて呼ばれるのは、何と云いますか、自分としては非常に困るんですけど。・・・」
「ああ、その事か」
「自分如きにまで先生つきで敬語で話されたりすると、自分の方は花司馬先生にどう話し返して良いものやら、まごついて仕方ありません」
「こうなったら花司馬先生に対しては、名前呼び捨ての命令口調で良いんじゃないか」
「茶化さないでくださいよ。これは冗談で云っているのではないのです」
 来間は万太郎をげんなり顔で睨むのでありました。
「ま、それは実は俺も困っているんだが。・・・」
「折野先生から花司馬先生に、どうぞご勘弁をと話して貰うわけにはいきませんか?」
「もう話したよ。しかし花司馬先生に依るとそれ絶対ダメなんだそうだ」
「そこをもう一度」
 来間は万太郎に合掌して見せるのでありました。
「二人して、何を深刻な顔で話しているの?」
 食堂に入ってきたあゆみがテーブルの二人に話しかけるのでありました。
「ああ、あゆみ先生」
 来間はそう云って立ち上がるのでありました。
「来間が花司馬先生に、来間先生、と呼びかけられるのが困ると訴えているのです」
 万太郎は横の席に座りかけるあゆみに云うのでありました。
(続)
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