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お前の番だ! 407 [お前の番だ! 14 創作]

 是路総士がそう云うのは、これですっかり落着したわけではなく、その後も色々と目配りを怠らず状況に注意せよとの命でありましょう。
「この調整結果は花司馬先生のご助力のお蔭でもあります。もしそれがなくてあたし達だけで処理しようとしていたら、ここまで纏まったかどうか判りません」
 あゆみが花司馬筆頭教士、いや、今では花司馬総本部教士の名前を上げるのでありました。花司馬教士はこの度の調整に、大いに手を貸してくれたのでありました。
 花司馬教士の献身的な仲立ちや口添えそれに強い指導力があればこそ、旧興堂派の各団体は万太郎とあゆみの調整を呑んだとも云えるのであります。花司馬教士は必要とあらば万太郎やあゆみの現地訪問に、進んでつきあったりもしてくれたのでありました。
 花司馬教士としても旧興堂派時代に誼のあった各団体のその後の動向には、少なからず気を揉んでいたのでありましょう。それだからこその献身でもありましたか。
 その花司馬教士でありますが、威治筆頭範士と会長連名の断交の手紙が来てから一週間ほど経って、鳥枝範士と一緒に総本部道場に姿を見せるのでありました。その日より総本部道場に身柄を置くと云うので、些か緊張の面持ちをしているのでありました。
「先ずはこの度のご高配に、幾重にも感謝申し上げます」
 花司馬教士はそう云って両手をついて律義な座礼を是路総士に送るのでありました。
「一時の間、稽古以外の煩いが多々ありましたが、これからは常勝流の稽古に励んで、素晴らしい武道家として立ってください。道分さんの遺風を継承すると云う意味でも、花司馬さんなら立派に果たされる事でしょう。これからに大いに期待していますよ」
「身に余る激励のお言葉、胸に刻みます」
 花司馬教士は再び深々とお辞儀するのでありました。
「さて、貴方の処遇だが」
 是路総士は頭を起こした花司馬教士に告げるのでありました。「花司馬さんのこれまでの興堂派での年季と実績に鑑みて、総本部範士補、と云う称号を与えて、総本部の門下生を指導して貰いたいと考えているのだが、それで異存はありませんかな?」
 是路総士に云われて、花司馬教士は居心地悪そうな及び腰を見せるのでありました。
「いや、自分は興堂派では筆頭教士でしたし、総本部に移ってすぐに、範士補、と云う称号は相応しくないと考えます。同じ常勝流とは云え、興堂派と総本部では多少の技術の違いがありますし、総本部の術理をすっかり呑みこんでいるわけでもありませんから」
「しかし私と鳥枝さんや寄敷さんにしても多少の違いはあります。折野だってあゆみだって自儘を消そうとして努力してきましたが、結局残るべき個性は残るのです」
「いやそれでも自分としては、暫くは総本部の技法にしっくり馴染むまでは、見習いと云う了見で修業させていただきたいと考えております」
「見習いが、ウチのあゆみや折野や来間よりも貫録があっては妙だろうよ」
 鳥枝範士が笑い顔で横あいから云うのでありました。
「それは自分が歳嵩であると云うだけで、総本部での修業歴はお三方には及びません」
 花司馬教士は案外、と云うよりは、予想通りなかなか頑固なのでありました。
(続)
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