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お前の番だ! 406 [お前の番だ! 14 創作]

 でありますから、同一地域で活動をしている旧興堂派の団体は、原則としては既存の総本部系の支部下に形式上所属して貰って、実体としてはこれまで通りの独立した団体運営を許可するのでありました。これでそこの団体間に友好的な交流が新たに芽生えるのであれば、それは最も万太郎とあゆみが望む調整となるのでありましたが、実際のところはなかなかそうもいかない、個々の地域の事情もあれこれ存在するのでありました。
 例えば旧興堂派の団体を率いる指導者が総本部系の指導者よりも、歳も年季も力量も、それに規模でも上で、しかも活動歴も古いとなれば、格下と見做している団体の傘下に収まるのは、一方ばかりではなく双方にしっくりこないものが残るでありましょう。双方に目の前の現実を受け入れる器量があれば、向後の事は取り敢えず置くとしても、一旦は円満な収拾が図れるのでありますが、そうすんなりとはいかない事もあるのでありました。
 しかし既存の総本部系団体の不利益を回避すると云う前提を、先ずはきっぱりと示す事が旧興堂派団体への明快な態度と思い定めて、万太郎とあゆみはその線から外れない態度で調整に臨むのでありました。後は旧興堂派団体指導者の度量と勘定次第であります。
 そうは云っても折角総本部を頼った旧興堂派の団体に、新参だからと云ってつれなく原則通りを押しつけると云うのも、万太郎もあゆみも情に於いて忍びないところもあるのでありました。興堂派の混乱は云ってみればその団体には不慮の災難でもありますから。
 そう云う場合は、万太郎とあゆみは総本部の誠心誠意を見せるために、手分けして現地に赴く事もあるのでありました。勿論、是路総士の一任を取りつけた上で。
 万太郎とあゆみは日本地図を広げて、毎夜、苦慮の表情で、調整具合を確認するのでありました。調整が成ったところは色鉛筆で赤く塗り潰すのでありますが、地図上に塗り潰しのない未調整の地域がなくなるまでには、三か月と云う時間を要するのでありました。
 ほぼ調整が成った時点で、万太郎とあゆみは首尾を是路総士と鳥枝範士、それに寄敷範士に報告するのでありました。三人は万太郎とあゆみの話しを、途中で何も質問や疑問や自分の思いを差し挟む事なく、黙して謹慎に聞いているのでありました。
「思ったより時間がかかって申しわけありません」
 締めくくりの言葉として万太郎がそう云うのでありました。
「いやいや、何かと扱いの面倒なヤツ等が多い武道の世界で、三か月程で大方の合意を取りつけたのだから、これは大したものだと云えるな」
 珍しく鳥枝範士が万太郎とあゆみを誉めるのでありました。
「しかも結局は、揉めて所属を取り消すところが幾つか出ると思っていたが、移籍を望む団体がほぼ欠ける事なく、こうやって綺麗に纏まったのだから大した手腕だ」
 寄敷範士もやや大袈裟に誉めそやすのでありました。
「まあ、向こうとしても総本部に所属しなければ常勝流の名前を使えないし、孤立した儘でこの先団体を維持するのは至難であるとか、或いは寄らば大樹の陰、と云った気持ちもあったのだろうが、それにしても三か月で一応円満にここまで良く纏められたものだ」
 鳥枝範士が万太郎にニンマリと笑いかけるのでありました。
「いや、二人共ご苦労だった。暫くゆっくり休めと云いたいが、そうもいかんかな」
(続)
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