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お前の番だ! 402 [お前の番だ! 14 創作]

「威治の思い描いているこれからの在り方、なんと云う尤もらしい云い方はそぐわないとワシは思いますな。威治はまともに稽古を積んでこなかったものだから、常勝流の体術も剣術も大して上手くもないのです。親父さんのように常勝流の本道で体裁を張るわけにいかないから、結局際物勝負するしかないと云うだけの話しです。それも大して思慮もしないで、思いつきと浅知恵で捻り出した世間受けしそうな際物で、と云う事でしょうな」
 鳥枝範士は身も蓋もない云い方をするのでありました。
「ま、何れにしても威治君の翻意は、詮ずるところなかったと云う事ですなあ」
 是路総士はやや落胆の口調で云うのでありました。
「こうなれば、早速に広島の須地賀さんに加盟受入れの連絡をせねばなりませんな」
「今日は寄敷さんの予定は、・・・」
 是路総士は座敷の、障子戸の辺りに控えている万太郎の方を見るのでありました。
「押忍。夜に八王子へ出張指導に行かれます」
「向後の打ち合わせをしたいから、少し早い目にこちらに寄って貰えると有難いな」
「そうですね。では電話してみましょう」
 鳥枝範士はそう云って立つと是路総士の後ろに回って、床の間の端に置いてある電話の受話器を取り上げるのでありました。
 寄敷範士は昼稽古が終わった頃に総本部道場にやって来るのでありました。早速の打ちあわせの席には万太郎もあゆみも同席するのでありました。
「広島の須地賀さんにはもう、総士先生の方から加盟受入れの連絡はされたのですね?」
 寄敷範士は来間が持ってきたコーヒーを啜りながら訊くのでありました。
「ええ、もう済ませました。また近々上京して挨拶に伺うとのことでした」
 是路総士もコーヒーを口に運ぶのでありました。
「その折、岡山の黍野段吾さんと徳島の宇津野馬和留さんも帯同するとの事だよ」
 鳥枝範士が云い添えるのでありました。
「ああ、須地賀さんと一緒に離脱した興堂派の支部長だね?」
「興堂派の、元支部長、だ」
 鳥枝範士が訂正するのでありました。「須地賀さんに依ると岡山も徳島も、あれからすぐに離脱届を興堂派に郵送したそうだ。興堂派からは受理するともしないとも云ってはこないらしいが、まあ、放り置かれたと判断して、離脱は完了したと云う判断らしい」
「何も云ってこないのなら、敢えて引き留めない、と云う事になるだろうからね」
「そうだね。どうせそんな風だろうとは思っていたが、長年興堂派を盛り立てた支部に対して、せめて挨拶の一言でもあって然るべきだろうが、まあ、今の興堂派の威治とあの会長にそんな大度を期待しても、端から詮ない話しだろうがな」
「興堂派、ではなく、今は、武道興堂流、です」
 不必要かとは思うのでありましたが、万太郎がそう訂正を入れるのでありました。
「ああそうだ、興堂流か。確かにそんな風な名前だったな」
 そう訂正する鳥枝範士の言葉つきには、多少嘲弄の響きが籠っているのでありました。
(続)
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