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お前の番だ! 401 [お前の番だ! 14 創作]

「そんな態度に出ない限り、決して助けないのですね?」
「総士先生は常勝流を守るお立場に、先ず、おありになる。威治に限らず、お前でもこのワシでも、若しも常勝流の名前に傷をつけるような事をすれば、容赦なく排除される」
 鳥枝範士は万太郎を強い眼差しで見るのでありました。「情に於いてどうであれ、道統を守るために宗家がなさる事は、何時も明快でなければならんのだ」
 なかなかに厳しいものだと万太郎は腹の中で溜息をつくのでありました。自分なぞは到底そのような立場には立てないでありましょう。
 まあ尤も、若し望んだとしてもそんな立場に立つ卦は、自分には全くないであろうと万太郎は考えるのでありました。将来、その立場に立つ可能性の最も近くに居るのはあゆみでありましょうが、あゆみにはこう云った峻厳な覚悟が持てるでありましょうか。・・・
 さて、この日から四日後に、興堂派会長と威治筆頭範士の連名で総本部に封書が送られてくるのでありました。これは興堂派が以降、常勝流、の冠を外して、武道興堂流、と名を変えて完全に総本部との繋がりを切ると云う宣言の手紙でありました。
 書簡の中で威治筆頭範士は武道興堂流の初代宗家を名乗るとも記してあるのでありました。云ってみれば、是路総士と同等の立場に立つと云う事になるのであります。
 また発起人として会長を始め、幾人かの世間に名の知れた政治家や実業家の名前も書き留めてあるのでありました。この書簡にそれは敢えて記す必要のない事と思われるのでありますが、その中に会長が属する政党の田羽根増五郎幹事長の名前もあって、これは鳥枝範士への当て擦り、或いは逆恫喝の心算で態々書いてきたと思しいのでありました。
 その手紙を是路総士から見せられた鳥枝範士は、後ろの方にある発起人の件を読んだ後、鼻を鳴らして嘲弄の笑みを片頬に浮かべるのでありました。
「発起人の中に田羽根増五郎さんの名前がありますね」
 是路総士は事の序と云った感じで鳥枝範士に云うのでありました。
「そうですな。あの陰険な会長がワシを嬲ろうとして態々書いてきたのでしょう。しかし実は一昨日の夜に、その田羽根さんからワシの家に電話がありましてね、興堂派について色々聞かれましたので、威治の人となりも含めて一通りの情報や経過等はワシから話しておいたのです。会長にたってとせがまれたのでつきあいから一応名前は貸す事にしたが、それ以上に興堂派に深入りする心算は更々ない、と云う言葉を既に貰っております」
「田羽根さんとの仲は、会長より鳥枝さんの方が濃いのですかな?」
「そうですな。学校の先輩で、今は色々と持ちつ持たれつの間柄でもありますから」
 鳥枝範士はそう云って何となく意味有り気に笑うのでありました。「しかしこの様な書状が届くとは思っておりましたが、こうも早く来るとは思いませんでしたなあ」
「あれこれ考えて、常勝流の名称を外しても然して影響はないと判断したのでしょう」
「まあ、この前の話しあいで、云ってみればこちらが追いつめたような按配ですから、こう結論するしか、結局はないと云えばないでしょうからな」
「常勝流の名前を使わない方が、威治君の思い描いている興堂派のこれからの在り方には、寧ろ有利に働くと勘定したのでしょうね」
(続)
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