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お前の番だ! 399 [お前の番だ! 14 創作]

「道分先生の葬儀の時の印象から、僕はもっと威張りくさった態度で話しあいに臨んでくると思っていましたが、特段そんな風でもありませんでしたね」
「鳥枝さんに端から捲し立てられて、調子が狂ったのだろう」
 寄敷範士がニヤニヤと笑いながら云うのでありました。「まあしかし、今日は大いに不愉快であったろうから、今後何か意趣返しを企むかも知れんな」
「そうだな。ヤツは根が陰湿そうでもあったからな」
 鳥枝範士が頷くのでありました。「まあしかし、一応、ヤツより遥かに大物政治家の名前を面前にかませて牽制はしておいたから、少しは腰が引けるとは思うが」
「鳥枝さんは田羽根増五郎と知り合いなのかい?」
「ああ勿論。ワシの娑婆での仕事柄、色々世話になったり世話したりの間柄だよ。田羽根増五郎は実はワシの大学の先輩でもあるのだ。同時期に在学したわけではないが」
「へえ、そうか。流石に建設会社の会長だけの事はある」
「武道に娑婆っ気を持ちこむのはご法度だが、今次の場合は仕方なかろう」
「しかし鳥枝先生と会長の揶揄合戦は、見応えがありました」
 万太郎がそう云って鳥枝範士に笑いかけるのでありました。
「ああそうかい。もっとヤツを苛々させるからかいが出来なかったかと、今反省していたところだ。次の機会のために、一層この三寸の舌を磨いておかねばならんなあ」
 鳥枝範士は満更、冗談だけとも云えぬ表情をするのでありました。
「それともう一つ思った事は、・・・」
 万太郎はそう云ってから少し云い淀むのでありました。
「何だ? この際次の作戦のためにも、何でも云っておいくれ」
 鳥枝範士が先を促すのでありました。
「まあ何と云うか、鳥枝先生は勿論ですが、寄敷先生も総士先生にしても、遠慮のない云い方ですが結構人が悪い食えない方達だなと、そう云う風に思いました」
「ほう、これまたどうして?」
 寄敷範士が興味津々と云った顔をするのでありました。
「そもそも始めから興堂派を切り捨てる腹積りで、今日の話しあいを設定されたと云うところもそうですが、若先生を追いつめて自爆に誘導するために、鳥枝先生が恫喝の手口、総士先生と寄敷先生がお為ごかしの手口で連携されているところなんかを見ていると、いやあ、何と云うのか、お三方もなかなかに悪人だなあと感心したわけです」
「ふうん、そうか」
 寄敷範士がニヤニヤ笑って頷くのでありました。
「武道家をやっている者なんと云うのは、まあ、実は決まって根はそんな風だよ」
 是路総士が無表情で云うのでありました。
「勝負に於ける騙しあいとか駆け引きとかを何時も考えている、と云う点で、ですか?」
「そうだな。それと自分の技が他に比べてどのくらい凄い威力を持っているかを、何時も最大に気にしている一種の陰険なナルシシストも多いな」
(続)
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