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お前の番だ! 397 [お前の番だ! 14 創作]

 鳥枝範士が威治筆頭範士を鬼瓦のような顔で睨みつけて声を荒げるのでありましたが、その後一転して会長の方に少し柔らかい視線を送るのでありました。「威治にはその辺の機微が何も判らないようだが、会長さんならちゃんと了解されますよな?」
 そう云われて会長は思わず頷くのでありました。しかし思わず頷いたのは拙かったと思い直したのか、その後で一言添えるのでありました。
「ま、あくまでもこちらさんに、何の策動もないと云う事が大前提ですがね」
「当たり前です。こちらは頼って来たのを、ただ受け入れるだけです」
 鳥枝範士は瞑目して頷くのでありました。「じゃあ威治、広島支部はウチが引き受けると云う事で良いんだな。まあ、ここでお前に断りを入れる必要もないんだが、一応念のために訊いておく。後になって下らんイチャモンをつけられても叶わんからな」
 鳥枝範士はまた威治筆頭範士の方に目線を向けるのでありました。
「広島の須地賀さんが、興堂派から総本部に移りたいと云うのなら、別にいいんじゃないですか。こちらも敢えて引き留める気もないし」
 威治筆頭範士はふてた云い方をするのでありました。
「威治君、そう云う云い方はやめなさい」
 是路総士がそれを窘めるのでありました。
「だって仕様がないじゃないですか、移りたいと云っているんだから」
「おい威治、総士先生に対してその無礼な口のきき方は何だ!」
 鳥枝範士がまたもや鬼瓦に変身するのでありました。
「まあまあ、そう一々壊れた鉄瓶のような顔で怒らないで。そんな三下ヤクザみたいな脅し方をして見せなくとも結構ですよ。威治君の迂闊故の粗相は私が平に謝りますから」
 会長が鳥枝範士を苦笑しながら宥めるのでありました。
「壊れた鉄瓶とか三下ヤクザとか、陳腐な比喩だ。それでワシをからかった心算なら、ピント外れですなあ。会長さんも威治と同じで、手前味噌な勘違いがお得意と見える」
 鳥枝範士はお返しの揶揄を会長に献じるのでありました。
「別にからかう気はありませんよ。陳腐な例えしか使えないのは、偏に私の頭の悪さからです。つまらん体面のために、竟口にした私の無意味な文言に小心に拘りなさんな」
「竟口にした無意味な文言、のふりをして、実は結構、内心秘かに、ワシを傷つけるに十分効果があったと、お門違いの会心の笑みでも漏らしているのじゃないですかな」
 この鳥枝範士と会長の揶揄自慢は、なかなか果てないのでありました。

 結局のところ興堂派が向後、常勝流の名前を使わないと云うはっきりした言質は、威治筆頭範士からも会長からも取れないのでありました。威治筆頭教士はもうその気になったようでありますが、会長が実利に鑑みてその可否の判断を曖昧にしたからであります。
 話しあいも膠着して仕舞ったようだし、鳥枝範士との揶揄の応酬もどうやら種切れになったようだから、会長と威治筆頭範士は帰り支度を始めるのでありました。これ以上話しをしていても埒が明かないとげんなりしたのでありましょう。
(続)
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