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お前の番だ! 396 [お前の番だ! 14 創作]

「まあ、威治君が常勝流の名前を棄てると云うもの、一つの判断ではありましょうな」
 是路総士が至極落ち着いた口調で云うのでありました。
「確かにそうなれば、無関係となった我々は興堂派の動静に何も関心を持つ必要はない」
 寄敷範士が頷きながら同調するのでありました。
「そうですな。常勝流でないのなら、細々と口出しする謂れは何もないし」
 鳥枝範士も頷くのでありました。
「三人揃ってそうおっしゃっているのだから、良いじゃないですか会長、我々は常勝流を敢えて名乗らなくても。その方がこちらもサッパリするし」
 威治筆頭教士は会長に云い募るのでありました。
「まあ、その件は後でゆっくりと考えよう」
 総本部の重鎮三人が、まるで常勝流の名前を棄てる事を威治筆頭範士に指嗾しているように感じて、会長は興堂派の名前から常勝流の冠を外すと何やらの不利益が生じるのかも知れないと、少し考えるような素ぶりをするのでありました。当人が、まあ、武道界のあれこれの事情に詳しくはないため、即断出来難いのでありましょう。
 ひょっとしたら常勝流の名前は、武道界に於いては、結構持て囃される利用価値の高い名前なのかも知れないし、そうなると簡単に棄てるのは惜しいと云うものであります。政界の寝業師は、実利と云うところに関してなかなか真摯なようであります。
「興堂派が常勝流と云う名称を流名から外すのなら、向後我々とは一切無縁となったと見做しましょう。そうなれば威治君が何をしようと勝手放題です」
 是路総士は威治筆頭教士の目の前に飴をちらつかせるような言葉、会長の不安をそそるような言葉を重ねるのでありました。
「そちらが勝手放題なのだから、こちらも遠慮なく自由にやらせて貰うぞ」
 鳥枝範士が威治筆頭範士をまた睨むのでありましたが、今度は何やら云い知れぬ不気味さを口の端の辺りに漂わせているのでありました。
「自由に何をやるのですか?」
 威治筆頭教士の声は対抗的な勢は辛うじて保って入るものの、その不気味さに撃たれたようにやや裏返って仕舞うのでありました。
「勿論、広島支部の総本部への加盟を認めると云う事が一つだ。他にそのような動きが出てきても、もう遠慮はしない。総本部に救いを求めてくるなら、どしどし興堂派の既存の支部も受け入れる。団体もそうだが、個人でこちらに移ろうとする者も同じだ」
 鳥枝範士が、自由、の一端を披露するのでありました。
「門下生や組織を興堂派から引き抜こうと云うのですか?」
「おい威治、気をつけてものを云えよ。総本部が何で引き抜きなんかする必要がある。救いを求めてくるなら、と云っただろう。こちらから働きかけをするのじゃない。そう云うのは云う迄もない道理だろう。お前のお得意の、手前勝手な勘違いをするな」
「だって、まわりくどく云ったとしても、結局同じ事じゃないですか」
「同じじゃない!」
(続)
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