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お前の番だ! 388 [お前の番だ! 13 創作]

「まあしかし、実際の話しとして、道分さんが独立して何方かの伝でテレビや雑誌なんかに取り上げられて持て囃されたり、著名な格闘家やスポーツ選手に常勝流の指導をしたりして華々しく活躍すると、こちらにもその余沢が波及してきましたからなあ」
 是路総士はそんな話しを続けるのでありました。
「いや確かに、あの道分先生の遣う常勝流と云うのは、一体どのような武道なのかと娑婆の興味を引けば、その本家たるこちらにも関心を持つ向きも当然出てきますから」
 鳥枝範士が表情をやや緩めて頷くのでありました。
「総士先生もテレビに出演された事がありましたなあ」
 寄敷範士も懐かしそうな顔をするのでありました。
「そうそう。道分先生と総士先生が一緒に出演して、夫々の演武を見せるとか昔の修業時代の話しをするとか、確かそう云う企画だったかな」
「その時の総士先生の受けを取るために、私もその番組に出させてもらったよ」
 寄敷範士はやや自慢気な顔をするのでえありました。
「ああそうだったかな?」
「そうそう。あの時は確か鳥枝さんは仕事の都合で出演出来なかったんだ」
「そうかそうか。そうだったなあ。それから、武道とは何の関係もない、女性雑誌の取材なんぞも来た事があったなあ。あれにはワシも写真で出演したぞ」
「鳥枝さんが写真に出たから、あの号はあんまり売れなかったらしい。余りにも鳥枝さんの顔が厳つくて、大半の女性読者が敬遠したと云う話しだ」
 寄敷範士がそんな冗談で鳥枝範士をからかうのでありました。
「まあ、兎も角、興堂派と云う流派は道分さんと云う、卓越した技の遣い手であり、それにその強烈な個性があってこそ、流派としての異彩を放てたのかも知れない」
 何となく、急に和やかになって仕舞った話しの舳先を、その切かけを作った筈の是路総士が本筋の方にやんわりと戻すのでありました。
「確かにウチのような代々続いているところとは違って、新興の流派はそれを興した初代が亡くなると、存立自体が一気に危うくなると云う宿命がありますなあ」
 寄敷範士が是路総士の軌道修正に従うのでありました。
「特に二代目が虚け者となると、目も当てられない」
 鳥枝範士も主題に復帰する様相でありました。「道分先生の威名を貶めないためにも、いっその事興堂派は、ここでバラけた方が良いのかも知れないな」
 つまりここで、先程の、常勝流は常勝流として一つに纏まった方が良い、と云う是路総士の腹積りへと話しは戻るのでありました。万太郎にとってそれが意外の発言であり、是路総士が初めて見せる冷厳で鳥肌立つほどクールな一面であったとしても、常勝流宗家の意向であるからには絶対の趣があると万太郎は思い知るのでありました。
 興堂派広島支部が威治筆頭範士に三下り半をつきつけて、その足で総本部に加盟を願い出れば、いよいよ総本部が興堂派のゴタゴタに介入する端緒が開くと云う事になるのであります。万太郎は一先ず、気の重さを脇に置かなければならないでありましょう。
(続)
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