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お前の番だ! 380 [お前の番だ! 13 創作]

 しかし昔を知らない者にとっては、全く異形と云える程に変貌した今の様態が、興堂派の元々の姿であり稽古のやり方であると勘違いして仕舞うのは仕方のない事であります。あの威治筆頭範士の事でありますから、その辺りの勘違いを自分に都合良く、全く無責任に逆用して、新しい門下生を道場に引き留めようとするでありましょう。
「興堂派の本部に嫌気が差した門下生達は、都内にある興堂派の支部の方に流れるか、ウチの支部にも新しい稽古場を求めてやって来ています。興堂派の地方の支部は未だ比較的安定を保っていますが、それは威治に影響力がないためで、威治の方針を無視して前の儘の稽古をやっているようです。地方の支部長クラスは、威治を総帥として評価してはいない者が多くて、ひょっとしたら独立と云う道を選ぶかも知れませんし、支部ごと丸々ウチの方に鞍替えしようとする動きも、二三と云わずかなりの数があるやに聞いております」
 これは数日後の、総ての稽古が終わった夜に、是路総士に最近の情報を入れる鳥枝範士の話しでありました。その場には万太郎とあゆみも同席しているのでありました。
「支部の離反現象が顕著になれば、大いに威治君の気持ちが揺らぐでしょうかな」
「いやいや、どうしてどうして」
 鳥枝範士は掌を横にふって見せるのでありました。「会長が強権発動して支部の自由な動きを封じていますから、おいそれと支部も離反は出来ないでしょうなあ」
「その発動している強権と云うのは?」
「興堂派の傘下にいるからこそ道分先生の威名を利用出来るので、離れたら道分先生の名前は一切使わせないと云う事のようです。確かに支部としては、道分興堂の常勝流興堂派、と云う看板がなければ、なかなかその地域で活動し難くなるでしょう。それに離反に動けば、脱退ではなく除名処分となるような話しですから、それでは後々困りましょう」
「強権と云うよりは、一種の恫喝ですな」
 是路総士は眉根を寄せるのでありました。
「特に大きな所帯の支部は、看板のつけ替えは致命傷になる場合がありますからな。勿論、それでも離脱すると息巻く支部もあるやに聞いておりますが」
「我々の方にも小難しい問題が飛び火してきそうですね」
「もう火の粉は降り始めております」
「確かに徐々にそんな兆候がありますかな。雪崩を打って、と云う風ではないにしろ」
「興堂派の最も大きな支部である広島支部が、威治の遣り様に腹を据えかねて、道分先生の偉業を守るためにも、と云う思いから近々離脱に動くような気配です」
 鳥枝範士は具体的な生臭い話しを始めるのでありました。
「広島支部と云うと、嘗て総本部から独立した道分さんの初期の内弟子だった、須地賀さんの処ですね。あの人は正義感の強い頑固者で通っている人ですからなあ」
「そうです。しかもなかなかに経営的な面も遣り手だと評判の、須地賀徹君です」
「その広島支部の離脱は本当なのですか?」
「私の知りあいの興堂派の理事からの情報です。その理事と須地賀君は気があうようでして、色々こみ入った相談なんかも頻繁に電話でしているようです」
(続)
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