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お前の番だ! 373 [お前の番だ! 13 創作]

「お前みたいな武道一辺倒で今まで来たヤツが、この世知辛い世の中でおいそれと適当な仕事なんか見つからないぞ。そうは思わんか?」
「そうかも知れませんが、いざとなったら立ちん坊でも何でもします」
「そうか。しかしどうせ立ちん坊をする覚悟があるのなら、この際ウチに来ないか?」
「ウチ、と云われますと?」
 花司馬筆頭教士は鳥枝範士を真顔で見るのでありました。
「いや、総本部道場に来いと云っているのではなく、鳥枝建設の方だ」
「ええと、鳥枝建設で立ちん坊をさせていただけるのですか?」
「そうじゃない。鳥枝建設の社員にならないかと云っておるのだ」
 そう聞いて花司馬筆頭教士の眉宇が一瞬開くのでありました。
「この自分が、鳥枝建設の社員に、ですか?」
「何だ、鳥枝建設では不足か?」
「いえ、とんでもありません」
 花司馬筆頭教士は慌ててせわしなく首と両掌を横に何度もふるのでありました。「それは思いもかけなかった有難いお誘いではありますが、しかし鳥枝先生からこの自分如きが、そんなご高配を頂戴してもよろしいのでしょうか?」
「なあに構わんよ。それに鳥枝建設には常勝流の愛好会があるから、そこで興堂派のゴタゴタが落ち着くまで、暫く体熟し程度だが常勝流をやっておれ。ま、将来に亘ってずっと鳥枝建設の常勝流愛好会に居て貰う心算ではないんだがな」
 鳥枝範士はここで意味深長にニヤリと笑うのでありました。
「ああそれは良い。鳥枝さんのご厚意にこの際その身を預けるのも一手ではある」
 是路総士が何度も頷くのでありました。
「鳥枝先生のご迷惑にはならないのでしょうか?」
 花司馬筆頭教士は恐懼の面持ちで訊ねるのでありました。
「前にウチに入れた面能美の場合もそうだが、常勝流の内弟子をしていたヤツは滅多な事で音をあげないし、どんなキツイ仕事でも黙々と仕遂げるから、社内の受けは頗る良いんだ。ちなみに面能美は、今は秘書室主務と云う役職についている。この頃は海外での現場視察を取締役に代わって任されたりして、大いに活躍しているよ」
「ああ、前に神保町にも定期的に稽古に来ていた、あの面能美君ですね?」
「そうだ。面能美は鳥枝建設の常勝流愛好会の責任者にもなっていて、花司馬が来てくれれば大助かりだろうよ。彼奴はこの頃国内外の出張も多いので、時々稽古に穴をあけなければならんが、そういう時に花司馬がいてくれると指導を代わって貰えるからな」
「花司馬君が指導するなら、面能美より良い指導が出来るだろう。愛好会の会員さんも、その方が返って好都合、と云った按配になるかも知れない」
 是路総士が満更冗談でもない口ぶりで云って、またもや何度も頷くのでありました。
「しかし自分が入ると、面能美君が色々やり難くなるのじゃないでしょうか?」
 花司馬筆頭教士はそうなった場合の危惧を遠慮がちに述べるのでありました。
(続)
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